私の方がモテるけど２【青葉城西】

62 怪我 ページ29

及川side




｢佳奈子ちゃん！大丈夫？！｣


萌絵ちゃんの姿が見えなくなったのを
確認してから倉庫に駆け寄って声をかけると、
すぐに中から元気そうな声が返ってきた。


『徹？うん、大丈夫。ちょっと
おでこから血が出てるみたいだけど、
平気だから心配しないで』


｢はっ？血出てるの？！｣


？｢おいクソ川、どけ｣


後ろから落ち着いた
低い声が聞こえ、振り返る。


｢岩ちゃん！｣


岩｢佳奈子、ちょっと待ってろ。今開ける｣


ｶﾞﾁｬｯ、ｶﾞﾗﾗﾗｯ


『はじめも来てくれたんだ』


岩｢ったりめぇだろ。今、国見と金田一が
萌絵を追っかけてった。…………デコ、痛いか？｣


岩ちゃんがハンカチで傷の血を拭うと、
少しだけ、と答える佳奈子ちゃん。


｢佳奈子ちゃんにケガさせるなんて、
絶対許さない……………｣


自分でも怖い顔になっているのは
分かっていたけど、好きな子を傷つけられて
黙っているなんて、俺には出来ない。


『もう…………徹』


少し冷たくなった指先が俺の頬に触れて、
佳奈子ちゃんが俺の目をじっと見つめる。


『心配してくれるのは嬉しいけど、
萌絵ちゃんだって、たぶん私にケガさせる
つもりは無かったと思うし、これも結構
有力な証拠になるんだし、怒らないで？ね？』


佳奈子ちゃんは、優しすぎる。


もちろん俺たちだって嫌な思いをしてきたけど、
一番迷惑をかけられたのは、俺たちでも
他校の人たちでもなく、佳奈子ちゃんなのに。


『……………まあ、だからって、
今までのことは土下座されても許さないけどね！』


｢……………ぷっ、あはは！そうだね｣


岩｢ふっ……………萌絵が来たら、
言いたいこと全部言ってやれよ、佳奈子｣


白い歯を見せて笑う佳奈子ちゃんに
つられて、俺と岩ちゃんも笑顔になる。


花･松｢｢佳奈子！｣｣


『貴大に、一静まで……………もしかして、
全員で私たちのこと見てたの？』


？｢そうですよ｣


俺が隠れていた方とは反対の体育館の陰から、
2つの影が現れた。


渡｢俺たち心配で、及川さんの後ろから
ついて来てたんです｣


矢｢先輩が倒れたときすぐに
出て行きたかったんですけど、
我慢したんですよ？｣


『ふふ……………みんな、ありがとう』

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