逃げちまえ 2【梟谷】【稲荷崎】

06．6日目 ページ5

6日目の朝､何やら廊下が騒がしくて人だかりが出来ているところに行けば､ただでさえダメージを受けていた木兎さんが更に大ダメージを受けていた｡


｢何があったんですか?木兎さん｡｣


後ろから声をかけると彼の顔面は涙やら鼻水やらで酷いことになっていた｡


｢あかーじぃ……ごれ…聞いてぐれぇ……｣


そう言って渡されたのは1つのスマホ｡


再生のボタンを押して木兎さんが何故こんなにも大ダメージを受けてるのか分かった｡



｢玲ちゃん､聞いたよ｡昨日木兎さん達と何かあったって……喧嘩?｣

『そういう事で良い』

｢私が玲ちゃんを体育館倉庫に閉じ込めちゃったから……あの時､体育館倉庫の鍵閉め頼まれて､誰も居ないと思って閉めちゃったの……ごめんね……

その後木兎さん達が助けてくれたみたいだけど､突き放すような事言っちゃったんでしょ?私がしっかりしてればこんな事ならなかったのに……｣

『別に助けてくれなんて頼んでない｡』

｢玲ちゃん……そんな事……｣

『私は梟谷のマネージャーじゃないし梟谷の人がどう思おうと関係ない事｡

見捨てるなら見捨てるでそれで良いし､どうせ彼らと会うのなんて大会くらいしかない｡

私の私生活には何の支障もない｡』




そこで録音は切れた｡

まるで"私は貴方達のことなんて差程大事に思ってないです｡"とでも言われた気分だ｡


｢…木兎さん､これ誰から渡されたんですか?｣

｢……そこに置いてあった……｣


そこに置いてあった人のスマホで勝手に聞いたのかこの人は｡


｢随分と酷い言われようだったな｡｣


昨日同様､現れたのは黒尾さんと夜久さんだった｡





✱





とりあえず朝食を食べに食堂へ向かった｡道中､孤爪とも会って彼にもこの録音を聞いてもらった｡


｢……玲の声は本物だと思うけど､愛澤さんのは嘘かもしれない｡｣

｢どういう事だ?｣

｢この録音が嘘の会話かもって事｡あまりこの録音を信じない方がいい｡

動画も録音もやろうと思えば編集で嘘のものを作れる｡｣

｢て事は玲が言ったのも嘘ってことか?!｣

｢いや､玲が言ったのは本当の事｡……だと思う｡｣

｢孤爪…あまり木兎さんを期待させる様なこと言わないで｡｣


｢後々面倒だから｣と付け足せば黒尾さんが苦笑いを浮かべていた｡

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