逃げちまえ 2【梟谷】【稲荷崎】

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｢なぁ!遊馬さんってバレーやってたの?!｣

烏野でそれを知ってるのは影山くらいだから彼が教えたのだろう｡

『中学まで……そういえば､新速攻は成功できたの?』


確か､影山は止まるトスを練習していた｡途中私が自主練に付き合っていたが､色々と人の事をしている場合ではなくて最後まで見ていない｡


｢梟谷と当たった時に成功しました｡｣

｢見てなかったんすか?｣と残念そうに言う影山に申し訳なくなった｡


『ごめん､見てなかった｡』

｢影山がすげぇセッターだって言ってたぞ!!｣

『そうなんだ｡』


彼にプレーを見せた覚えはないが?と思ってると｢アドバイスとか的確ですげぇ選手なんだなって思いました｡｣との事らしい｡


｢そんなに凄かったのに何でやめちゃったんだよ〜｣

その質問は影山にもされた｡

『んー､セッターにとって1番怖い事って何か知ってる?』


横目で2人を見ると頭にハテナを浮かべる日向と真顔の影山｡


｢トスを上げた先に誰も居ないこと｡｣


やはりセッターならそれが1番怖い事なんだろうか｡


『中学最後の大会､24対23の場面でトスを上げた先には誰もいなかった｡

スパイカーには尽くしてきたし､いつだってドンピシャのトスを上げてた｡

何がダメだったのかは知らないけど､チームメイトから言われたのは"もうアンタには着いていけない"の一言だった｡

でも､バレーは好きだし､セッターも好き｡』


｢またバレーやりてぇとか思わねぇの?｣


『うん､今は､皆のプレーを見てるのが楽しい｡

でも飽きたら女バレに入ろうかな｡』


そう言い終わった後に新しくその場に現れたのは侑さんだった｡

彼は｢ん｣と手の平を差し出す｡

それに｢ん?｣となってると｢仲直りの握手や!｣と顔を赤くした｡


『仲直りに握手するのはルールなんですか?』


純粋に思った疑問を口にすると｢はぁ?!｣とデカい声を出された｡


｢なんやねん!!しないんか?!普通仲直り言うたら握手やろ!!｣


彼の圧に負けて｢そういうもんか｣と勝手に納得して握り返した｡


｢それと､お前が合宿前に言っとったこと｡｣

『何か言いましたっけ?』

｢言うたやろうが！"今の言葉の意味が分からないならセッター失格"やって！｣

そういえば言った気がする｡


｢あれの意味､やっと分かったわ｡俺はセッターやのに､コートをよく見るんがセッターやのに!仲間の事をちゃんと見とれんかった｡｣

『では､その言葉は取り消します｡

あなたはちゃんと優れたセッターです｡』

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