୨୧ ページ3
.
慌てて掴んだその手は、ふにふにと柔らかくて、それでいてきめ細やかなすべすべとした肌だった。何をしたらこんなお人形さんみたいな手になるのか、同じ女立場でなんのケアもしていない自分の手で触れるのが、なんだか恥ずかしかった。
折れてしまうんじゃないかと思う程細い指たちを掌に収めて、ぐっと彼女を引き上げる。
顔が近付いた時、彼女の髪からふわっと甘い匂いがした。
『大丈夫…ですか？』
「…えぇ、」
見たところ怪我をした様子は無いし、服もそこまで汚れていないようで安心する。ふんわりと広がるスカートはドレスみたいで、傍で見るとより妖精みたいだと思った。
『あ、』
汚れていないと思っていたが、スカートの裾に少しだけ泥が跳ねていた。
私が声を上げると少女は不思議そうな顔をしたので、そこを指せば、せっかく緩んだ眉間に再び皺が寄る。
「…はぁ、最悪」
『あの、ウェットティッシュなら持ってるんですけど』
高そうな服だしウェットティッシュはご法度かもと思ったが、「じゃあ1枚くださる？」と返される。先程と違ってすぐに助けを求めてくれた事に、何故だかすごく嬉しくなった。
カバンの中からウェットティッシュを取り出して、1枚渡そうと差し出すが首を傾げられた。
「貴女、服は拭いてくださらないの？」
『え、あ、…あぁ！』
きょとんと無邪気な顔で聞かれて、納得がいった。というか、さっきまで触らないでと言っていた相手にそこまで求めてくるなんて思ってもみなかった。
服装と言い、話し方と言い、どこかのお嬢様なのだろうか。
そんなことを考えながら、カバンを地面に置いて立ち上がった彼女の元に跪くようにしゃがむ。
スカートはさらさらとした素材で、触れただけで高級感を垣間見た気がした。
ウェットティッシュでぐっと拭えば、泥はあっという間に取れる。シミも残っていなさそうだし、彼女が気にしなければクリーニングも必要無さそうだった。
『取…れました！』
パッと見上げて言えば、私の顔を見て数回瞬きした後、ふいっと顔を逸らされる。ん？とも思ったが、人の顔をそんなにまじまじと見るもんじゃないなと思い、スカートの裾を払いながら立ち上がった。
置いていたカバンを持ち上げて肩に掛けたり、ウェットティッシュを仕舞っていれば、「あの」とおずおずと声を掛けられた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 869人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽんず(プロフ) - しろさん» コメントありがとうございます！そうですよね…「お父…様、？」とすぺきゃをかましましたよ…。やっぱり別派生からお名前拝借するのアリですよね…。一から考えるよりお手軽で。ご提案助かります😊🙏 (2月25日 10時) (
レス) id: 97349c3877 (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 分かります分かります！私もあの一言で数分ほどフリーズしていました…登場してもしなくてもお話は美味しいのですが、もし登場させるのなら他の方が仰っているようにお名前だけㅁ兄鬼やwr式等の動画から拝借するのはどうでしょう？ (2月19日 1時) (レス) @page30 id: b1c40a48ed (このIDを非表示/違反報告)
シユ(プロフ) - いつも楽しく見ております!一つ提案なんですが出す場合は名前がご本人様とお嬢様で被ってしまうので名前だけwr式のどれかから貸りるもしくは新しく作るというのはどうでしょう?性格はもちろん普段のご本人様達で構いません。出さない場合ももちろん素敵だと思います! (2月18日 11時) (レス) id: 22aa8623f5 (このIDを非表示/違反報告)
快晴(プロフ) - 私は出しても構わないと思います！！それにぽんずさんが出したいならぽんずさんの作品なので好きなようにして良いと思います！！！🥂✨ (2月18日 10時) (レス) @page30 id: 3fba93f21d (このIDを非表示/違反報告)
雨蛙(プロフ) - お嬢様の百合ゆりしい世界感を保つのも素敵だと思いますわ！ (2月18日 10時) (レス) @page30 id: 41dac67fa3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
