6 ページ7
.
Aが教室から居なくなった隙を見て話しかけてきた硝子の一言はあまりにも衝撃的な内容だった。
「おい夏油。七海から『暫くの間、夏油さんを灰原に近づかせないで頂けますか』て、アイドルのマネージャーみたいなこと言われたんだけど。 ……お前、なにしたの?」
「……私は何もしていないよ」
そうか……七海は昨日の朝の出来事を硝子に話したのか。
『話すな』とは言わないが、せめて私の言い分を聞いてから硝子に言って欲しかった。
気だるそうに机に頬杖を付いて此方に視線をやる硝子は『詳しく話せよ』と。どうやら一応は私の意見も聞いてくれるらしい。
「実は昨日__」
*
「アッハ、流石だわA。もはや人の話を聞かないレベルじゃないじゃん」
硝子は話の途中で声を上げて笑い始めた。
『笑い事じゃないよ』とため息混じりに言えば、硝子はそんな私を見て更に笑った。
「夏油がAの誕プレを自分だって聞いた時はマジであの子に手を出される前に切ってやろうか。とすら思ったけど、話聞いた限りじゃ、夏油の思惑通りになんて一生話が進みそうにないね」
『まあ、せいぜい頑張りなよ』と、最初とは異なり励ましの言葉を投げかけられたタイミングでAが教室に戻ってきたので話は終わる__
「A。夏油がお前の不満言ってたぞ」
「えっ、そうなの??」
「ちがっ……硝子!!」
突拍子もない硝子の発言に、私は目を見開いた。
その言葉にAはパチパチと目を瞬かせながら私と硝子、交互に目をやってから『どのへん?』と、私ではなく硝子に聞き返す。
__そこは私だろう?! なんで私に聞かないんだ??
「A。違うよ、私はキミに不満なんて、」
「Aが手を出してくれないって不満がってたぞ、夏油のやつ」
「硝子!!」
ありもしないことをペラペラと喋るのは辞めてくれ!
ニヤニヤと口角を上げて私の方を見る硝子は完全に楽しんでいる、悪趣味だ。
硝子の言葉を聞いて私の目の前にやって来たAはやけに神妙な顔つきで私を見下ろしてくる。ゴクリと、彼女が生唾を飲み込む音が聞こえて。
「……げ、夏油、いいの?」
恐る恐る……と言った様子で紡がれた彼女の言葉に、今度は私が生唾を飲み込む。
「勿論、キミがいいのであれば」
「本当に? 怒ったりしない?」
「怒る? ? ……怒るわけ、ないだろう?」
『怒らない』と言えば、彼女の表情が綻んで、ソレにつられて私も頬を緩ませる。
__ああ良かった、彼女に伝わっ
「記念の一発!!」
次の瞬間、私の頭に鈍い衝撃が走り、視界の隅で硝子が笑いすぎてひっくり返ったのはほぼ同時の出来事だった。
.
64人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愛(プロフ) - あさん» はじめまして。コメントありがとうございます。面白いと言って頂けて光栄です☺️💕🙇♂️ (10月23日 18時) (レス) @page15 id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
あ - すごく面白かったです! (10月23日 18時) (レス) @page16 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:愛 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時:2023年9月6日 2時