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『貸出有効期間ってどのくらい?』彼女の言葉に思わず間抜けな声が出たのは仕方がない。
有効期間って? 貸出って……私は某レンタルショップのDVDでも漫画でもないのにその言い方!!
ああ、違う。 違うんだA。
私はそんなレンタル夏油みたいな扱いをして欲しくてキミに『プレゼントは私』などといった訳じゃない。
キミに私の全てを知って欲しくて、キミになら……そう思って恥を忍んで告げたというのに。こんな事になるのならば最初から人形でもブーケでも、別のものを準備しておけばよかった!!
「夏油? おーい夏油? 一人で百面相しているところ申し訳ないんだけど期間設けていない感じなら一年でもいい?」
「いや、」
「え?! 嫌だった?! じゃあもっと短縮して半年??」
「__ち、違う! 違うんだ、そうじゃないんだ!!」
この際、彼女に蔑まれようが私の胸の内を話してしまった方が良い。これ以上彼女に隠し事をして嘘をつき続ける事は私にはできない。
彼女の声を遮るようにらしくもなく大きな声を出せば、目の前の彼女は目をぱちぱちと瞬かせ『一週間?』小声で恐る恐る尋ねてくる……だから、そうじゃない。
「A。私が言いたいのはね、期間がどうとかそういう意味じゃないんだ。まず、その……私がキミに言った言葉の意味から違っていて……」
遠回しな言い方ではAに伝わらないことは分かっている。だけれど、彼女とはいえ異性相手にストレートな物言いは控えたい。
どうすればいい、どうすれば伝わる……??
「言葉の意味が違っていたってどういうこと? あまり難しい話、私得意じゃないんだけど……」
「その、」
膝の上で握りしめた両手が汗をかきはじめる。ここで変にタメを作れば作るだけ、私は自身の首を絞めることになる。
「わ、私は…………その、私は!!」
「うんうん〜夏油は?」
「だっ…………抱きたいって意味なんだ!!」
瞬間、私と彼女の会話は途絶えた。
カチ、コチ、と時計が秒針を刻む音が会話の消えた空間をまるで支配するかのように反響する。
__なにか……なにか言ってくれ!!
勢いのあまり自分は目を閉じてしまったので彼女の表情は分からない。反応がないのは困る、無言で出て行くのも気が引ける。
「____なぁんだ、そんなこと?」
「え?」
本日二度目の間抜けな声が出た。
『許可取らなくていいから』と彼女は言うと、私の背中に彼女の細い腕が回り、シャンプーの香りが鼻を掠めた。
「ハグくらい、いつでもやってあげるから安心して!!」
__違う!! そうじゃない!!
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愛(プロフ) - あさん» はじめまして。コメントありがとうございます。面白いと言って頂けて光栄です☺️💕🙇♂️ (10月23日 18時) (レス) @page15 id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
あ - すごく面白かったです! (10月23日 18時) (レス) @page16 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:愛 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時:2023年9月6日 2時