14 ページ15
.
｢A。もう一度聞くよ、キミは今なんて言ったんだい？｣
｢え、えーと……プレゼントは、私……です？｣
夏油の誕生日当日。
パーティーが終わった後、『キミからはなんのプレゼントを貰えるのかな？』上機嫌に尋ねてきた夏油に『プレゼントは私だよ』満面の笑みを浮かべて口にすれば、凄い勢いで夏油の部屋まで連行。
して、夏油は私の手首を掴んだまま、再度同じ言葉を求められる。正直に従い口にすれば、長い長いため息を吐かれた。
＿＿怒って、る？
背中に感じる無機質な木材の扉のドアノブを掴んで今すぐこの場を逃げ出したいが、チラリとほんの一瞬動いた私の視線に気がついた夏油が、無惨にもカチャリ。と音を立てて施錠してしまった。
｢＿＿ねえ、A。キミはその言葉の意味、きちんと理解しているのかな？｣
｢勿論してるよ！！ 去年の夏油が私にしてくれたじゃん！！ 私は金欠でお金もあまりないし、料理も裁縫も壊滅的だから、｣
｢ふぅん？ それで、 " プレゼントは私 " なんだ。……でもねA、その言葉の本来の意味は、 " そういう意味 " じゃないんだよ｣
口許に薄い笑みを浮かべた夏油は、拘束していた手首を離し、労わるように自身の手で優しく摩ると、徐に手首に口付けを落とした。
｢ひぇっ……｣
｢…………本当の意味はね、相手を誘う口説き文句で、" 私をあなたのすきにしてください " って意味なんだよ｣
引っ込めようとした腕は、捕まれたまま動けず、怖いほどニコニコと上機嫌な夏油が覆い被さるように顔を近づける。
ゆっくりと開かれた瞼の隙間から覗く琥珀色の瞳は、何時しか見た、熱を孕んだ視線そのもので、逃げる隙もなく空いていた片手が腰に回された。
＿＿プレゼントは私。つったら、傑喜ぶぞ。絶対、確実に。
不意に数日前の五条とのやり取りが頭に浮かぶ。今更思い出しても、何の役にも立たないのに。
｢折角のキミからのお誘いを無碍になんてしないから安心して欲しい｣
｢いやいやいや！！ いいです……あの、別の、別のに｣
｢残念だけど、それは聞き入れてあげられないかな｣
熱い夏油の吐息が耳を擽って背筋が震えた。
安心させるかのように『大丈夫だよ』と、甘く囁いた声に、『待って！』と、上げようとした抗議の声は、夏油の唇に塞がれた。
(完)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愛(プロフ) - あさん» はじめまして。コメントありがとうございます。面白いと言って頂けて光栄です☺️💕🙇♂️ (10月23日 18時) (
レス) @page15 id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
あ - すごく面白かったです！ (10月23日 18時) (レス) @page16 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛 | 作者ホームページ：https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時：2023年9月6日 2時
