12 ページ13
.
「夏油おはよう! 最近ずっと冷え込んでるよね、今年も雪降るかな?」
「おはようA。確か来週には雪が降るらしいよ。キミは寒がりだからちゃんと暖かくしないと、風邪をひいてしまうね」
真水に付けた後のようにピンク色に染め上がり悴む指先に息を吹き掛け擦っていると、私の倍はあるであろう大きな夏油の手が上から熱を分け与えてくれた。
捕まれた指先は夏油が先程まで入れていた自身のポケットの中まで誘導されて、ホッカイロがないのに同じぐらいに温かい。
「そういうの、他所でやってくれませんか。教育に悪いので」
「あ、七海! それに灰原も! おはよう!!」
背後から棘のある発言で空気を分断したのは七海だった。
眉間に皺を寄せ、睨むように見つめる先は夏油のポケットの中。つまり、繋がれている私と夏油の手、だ。
「え? 七海? 夏油さんとAさんがそこに……いるん? だよね?」
「ええ、いますよ。ですが二人とも少々…………お取り込み中のようですから、あなたは見ない方がいいでしょう」
灰原の視界は七海の手により完全にシャットアウトさせられていて、今現在、何が目の前で起きているのかさっぱりわかっていない様子で『おはようございますおふたり共!!』と、元気な声でナナメの方向に挨拶をしている。
「七海。今私たちのやり取りを教育に悪い……それはどういう意味、かな?」
「そのままの意味ですよ夏油さん。それではAさん、くれぐれも油断して食べられないようにだけ、気をつけてくださいね」
私たちよりも先に校舎に消えていった二人の後ろ姿を見つめていると、不意に隣にいた夏油が『あのさ、』口を開いた。
「……七海はあんなことを言っていたけど、私は勝手にとか無理やりはしないから安心して欲しい」
「え??」
夏油はやけに真剣な顔付きで、ポケットに入っている私の手をやや強めに握りしめる。気のせいか、先程よりも手が熱い。
マフラーで口許を隠すようにしている夏油は、キョロキョロと視線をさ迷わせながら、続きの言葉を探している。私が『ん?』と首を傾げると、ボボボッ……と効果音がつきそうなほど一気に顔だけでなく耳まで赤くなった。
なんだ、可愛いやつだな。
「……それはその、つまり……」
「つまり?」
「…………き、キミを、……その、だ……たい」
「えっ?? __ああ、分かった分かった」
繋いでいた手をそっと離して、夏油の大きな身体に抱きついて腕を回す。どうやら夏油は " また " 私にハグのオネダリをしたかったらしい。
「もー、夏油、ハグは好きなだけしていいって言ったじゃん!」
.
64人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愛(プロフ) - あさん» はじめまして。コメントありがとうございます。面白いと言って頂けて光栄です☺️💕🙇♂️ (10月23日 18時) (レス) @page15 id: 259fa0886e (このIDを非表示/違反報告)
あ - すごく面白かったです! (10月23日 18時) (レス) @page16 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:愛 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/dear_utsuk?utm_medium=url_text&utm_source=pro...
作成日時:2023年9月6日 2時