27.O 0215 ページ27
「翔くん翔くん、」
「…ん……」
そっと肩をぽんぽんと叩くと、ゆるゆると目を開けて潤んだ瞳が見えてくる。
「そろそろね、着替えてメイクしよ。」
「ん……」
目をゴシゴシ擦りながら体を起こして、しんどそうに息をつく。
体調悪そうなむくみと赤く充血した目が痛々しい。
「おいらついてるから、着替えようね。」
「ん…」
よっこいしょ、と翔くんの腕を自分の肩に回して抱える。
よたよた歩く翔くんに、他の3人もマネージャーも動揺しているのが手に取るように分かった。
衣装に着替えさせていると、ゲームを置いて近づいてくる助っ人。
「翔ちゃん、俺に寄っかかっときな。その間に大野さんが着替えさせてくれるから。」
「ん…」
聞いてるんだか聞いてないんだか分からない状態の翔くんを2人で着替えさせ、メイクさんの待つ部屋まで連れて行く。
廊下に出ると、無意識なのか翔くんが少し気を張って、自分の力で歩こうとするのが伝わる。
翔くんの気持ちが痛いほど分かるから、そっと腰を支える程度にしてそばを歩いた。
メイクとヘアセットを終わらせて楽屋に戻ると、またソファに沈み込む。
そこで初めて、あ、と声をあげた。
「ごめん…リハは…?」
「4人でやってきたよ。大丈夫、昨日の練習で翔さんよく出来てたから、本番でもしっかり踊れると思う。」
「まじか…ごめん…」
頭を抱えるように俯く翔くんに松潤が近づいて、頭を撫でる。
「なーんにも心配いらないよ。本番ちょっと頑張って、昨日のダンス見せてやろう。」
こんな状態で踊りなんて大丈夫なんだろうか、なんて野暮なことは誰も言わない。
本番になればきっと無理してでも翔くんが完璧を作ることを、みんな知っているから。
自然に翔くんの周りにみんなが集まって、各々翔くんに触れる。
頭を撫でたり、肩を叩いたり、背中をさすったり、手を握ったり。
「大丈夫、俺らみんなついてるから。」
俯く翔くんの頰を両手で挟んで顔を上げさせる。
真っ直ぐに目を見てそう伝えると、眉毛がハの字に下がって、目が潤んだ。
「…うん、ありがとう。頑張る。」
ようやく少しだけ、笑顔が戻った。
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花(プロフ) - るりかさん» るりかさん、コメントありがとうございます!有難いお言葉ばかりで恐縮です…とても嬉しいです!お話が収まり切らなくて続編に突入致しましたので、是非読みにいらしてください(^^) (2018年3月5日 0時) (レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
るりか - はじめまして。私もこっそりお邪魔している一読者です。ホントに文章やセリフがリアルに迫ってくるので、本気で翔さんのことが心配になってきてます(^^;。花さんの文章のファンになりました。これからも執筆楽しみにさせてもらっています。でもご無理のない範囲で(^^)。 (2018年3月3日 11時) (レス) id: 8c381e902d (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 花序さん» 花序さん、コメントありがとうございます!温かいお言葉とても嬉しいです(^^)そろそろお話も終盤なので、最後まで読みに来て頂けたら幸いです。これからもよろしくお願いします! (2018年3月2日 8時) (レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
花序(プロフ) - はじめまして。ひっそりこっそり毎日覗きに来させていただいてます(笑)巧みな文章にどんどん引き込まれてドキドキしながら読んでます!Sさんの病系が好きなので、今後の展開がとても楽しみです。無理なくマイペースに更新されて下さいね!応援しています(^^) (2018年2月28日 0時) (レス) id: 62c126ed99 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - しょうこさん» しょうこさん、初めまして!コメントありがとうございます!この分野は狭めのニッチでやっている自覚があったので(笑)、同じように感じてくださる方がいてくれて嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (2018年2月19日 20時) (レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花 | 作成日時:2018年2月8日 21時