23.A ページ23
事態に気づいたマネージャーが、交通量の少ない路地に車を止める。
「ごほっ…うぇっ……」
「つらいね…がんばれ…」
苦しそうに咳込む背中をとんとん叩く。
少しずつ重くなる袋。泣きながら吐く翔ちゃんは少し熱くて、震えていた。
「大丈夫ですか…」
「結構吐いちゃってる。しばらく休ませよう。」
「おぇっ……」
「ゆっくりね、深呼吸しようか。」
息が上がってきた背中をゆっくりさすって呼吸を整えてあげる。
何度かまた戻して、しばらく吐き気に邪魔されながらも、深呼吸を繰り返すうちに少し落ち着いたみたいで、小さくごめん、と呟いた。
全然、と答えたタイミングで運転席からペットボトルを差し出され、そろそろ、と複雑な顔で腕時計をちらりと見せられる。そっと頷いて、キャップを開けて翔ちゃんに渡した。
下げた袋を受け取って携帯でみんなに連絡をとる。
瞬間、翔ちゃんから目を離したとき。
「うっ…っ…」
ちびちび飲んでいた水がまた刺激してしまったのだろう、背中を波立たせて口元を押さえている。
慌てて下げていた袋をまた構えてあげると、飲んだばかりの水分がぼとぼとと袋に落ちていった。
「うぇっ…ごほっ…」
「きついね…楽になるまで吐いちゃいな…」
「ごめ…っ…」
袋を翔ちゃんに持たせて、どうしたの？と心配するみんなに返事を返す。
携帯をしまってまた翔ちゃんの背中を強めにさすると、マネージャーに声をかけられた。
「すみません…無理は、承知なんですけど、時間的に厳しくなってくるので、…すみません、移動しますね。」
申し訳なさそうに眉毛を下げて話すマネージャーに、もう少しだけ、と返そうとしたら、翔ちゃんに制された。
「ごめん…大丈夫、お願いします。」
絶対大丈夫じゃないのに…
口元をもごもごさせながらも袋から顔を上げて、吐いたら楽になった、なんて息をついてみせる。
心配ったらありゃしない。
水で口をゆすいで、袋の口を硬く縛る。
バッグからタオルを出して顔を拭く翔ちゃん。動き出した車に一瞬つらそうに目をぎゅっとつむったけど、深くシートに体を預けると、相葉くんごめんね、と呟いた。
「いいんだよ全然、気にしなくて。」
「ありがとう…」
掠れ気味の声が痛々しくて、無理して欲しくなくて。
早く元気になれ、と頭をよしよしと撫でた。
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花(プロフ) - るりかさん» るりかさん、コメントありがとうございます！有難いお言葉ばかりで恐縮です…とても嬉しいです！お話が収まり切らなくて続編に突入致しましたので、是非読みにいらしてください(^^) (2018年3月5日 0時) (
レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
るりか - はじめまして。私もこっそりお邪魔している一読者です。ホントに文章やセリフがリアルに迫ってくるので、本気で翔さんのことが心配になってきてます(^^;。花さんの文章のファンになりました。これからも執筆楽しみにさせてもらっています。でもご無理のない範囲で(^^)。 (2018年3月3日 11時) (レス) id: 8c381e902d (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 花序さん» 花序さん、コメントありがとうございます！温かいお言葉とても嬉しいです(^^)そろそろお話も終盤なので、最後まで読みに来て頂けたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2018年3月2日 8時) (レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
花序(プロフ) - はじめまして。ひっそりこっそり毎日覗きに来させていただいてます(笑)巧みな文章にどんどん引き込まれてドキドキしながら読んでます！Sさんの病系が好きなので、今後の展開がとても楽しみです。無理なくマイペースに更新されて下さいね！応援しています(^^) (2018年2月28日 0時) (レス) id: 62c126ed99 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - しょうこさん» しょうこさん、初めまして！コメントありがとうございます！この分野は狭めのニッチでやっている自覚があったので(笑)、同じように感じてくださる方がいてくれて嬉しいです！今後もよろしくお願いします！ (2018年2月19日 20時) (レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花 | 作成日時：2018年2月8日 21時
