21.A 0213 ページ21
「うっ……うぇっ、けほっけほっ……ん……」
「ゆっくりゆっくり…気持ち悪いの全部出しちゃいな。」
とんとんと優しく背中を叩き続けると、収まっていた波がぶり返す。
どうやらまだ落ち着かないみたいだ。
いつもは心地よく感じる車のわずかな揺れも、今はただ苦しい。
翔ちゃんのマネージャーからここのところ翔ちゃんの具合が悪いと聞いた矢先に腰が痛いと言い出したから、正直ものすごく焦った。
平常心を装って楽屋まで翔ちゃんを抱えて行ったけど、ソファに寝かせた翔ちゃんの苦しそうな顔を見ると、心臓が跳ね上がって嫌な汗が出る。
「痛いね、あったかくしようね。大丈夫だよ…」
靴を脱がせてから、ジャージのパーカーやブランケット、俺のブルゾンなど、ありったけの布を被せて体が冷えないようにする。いつかのミノムシのようになったのに、翔ちゃんは嫌に寒そうに見えた。
たまらず心配して楽屋までついて来たマネージャーに湯たんぽを頼む。
布の上から背中や腰をさすっていると、苦しそうに目を閉じていた翔ちゃんが眉間に皺を寄せて小さく呻いた。
「どした？」
「……いたい、」
「痛い？どこ痛い？腰？」
「…こしと、あと、おなか…」
「お腹痛い？」
水と薬を持ってきた松潤が、翔ちゃんの顔の前まで腰を落としてもう一度聞く。
「翔さんお腹痛いの？」
「うん…」
「腰も痛い？」
「うん……」
「お腹壊したり気分悪かったりはない？」
「それは大丈夫…」
「そっか…うーん、とりあえず、痛み止め飲んで様子見ようか。どうしてもきつくなったら、マネージャーに言って、ちゃんと病院に連れて行ってもらうんだよ。」
「うん…」
松潤に起こされて何とか薬を飲んだ翔ちゃんは、そのままずるずるとソファに逆戻りして、ブランケットを顎まで引き上げた。
「ごめん、迷惑かけたね…ちょっと休んだらすぐよくなると思うから大丈夫だよ。
先に振り付け、練習しててもらっていい？すぐ戻るから。」
きついはずなのに強がって、大丈夫そうにぺらぺらと喋る。
こういうときのよく喋る翔ちゃんは心配で信用ならないけど、こうなるともう俺らも何も言うことが出来ない。
「うん…無理しなくていいから、よくなるまでしっかり休むんだよ。」
「焦らなくていいからね。」
「うん、ごめん。ありがとう。」
ちょっと待っててね、と言って目を閉じた翔ちゃんが心配で心配で、後ろ髪を引かれる思いで楽屋を後にしたのだけど。
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花(プロフ) - るりかさん» るりかさん、コメントありがとうございます！有難いお言葉ばかりで恐縮です…とても嬉しいです！お話が収まり切らなくて続編に突入致しましたので、是非読みにいらしてください(^^) (2018年3月5日 0時) (
レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
るりか - はじめまして。私もこっそりお邪魔している一読者です。ホントに文章やセリフがリアルに迫ってくるので、本気で翔さんのことが心配になってきてます(^^;。花さんの文章のファンになりました。これからも執筆楽しみにさせてもらっています。でもご無理のない範囲で(^^)。 (2018年3月3日 11時) (レス) id: 8c381e902d (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 花序さん» 花序さん、コメントありがとうございます！温かいお言葉とても嬉しいです(^^)そろそろお話も終盤なので、最後まで読みに来て頂けたら幸いです。これからもよろしくお願いします！ (2018年3月2日 8時) (レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
花序(プロフ) - はじめまして。ひっそりこっそり毎日覗きに来させていただいてます(笑)巧みな文章にどんどん引き込まれてドキドキしながら読んでます！Sさんの病系が好きなので、今後の展開がとても楽しみです。無理なくマイペースに更新されて下さいね！応援しています(^^) (2018年2月28日 0時) (レス) id: 62c126ed99 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - しょうこさん» しょうこさん、初めまして！コメントありがとうございます！この分野は狭めのニッチでやっている自覚があったので(笑)、同じように感じてくださる方がいてくれて嬉しいです！今後もよろしくお願いします！ (2018年2月19日 20時) (レス) id: 5d6e515f91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：花 | 作成日時：2018年2月8日 21時
