2 夢 ページ4
夢を見た。
とても美しい
薄紅色の花が舞う川岸を彼は何も言わずに歩いて行く。
ワタシは彼の後をついて行く。どうして彼についていっているのかは思い出せない。何処に行くのかとワタシが聞くと彼は，とてもいいところだ，とだけ答えてまた歩き出した。
さっきから舞っているこの薄紅色の花の名前をワタシは知らない。青空によく合う木に咲く花。
優しい風が春の匂いを運んでくる。
この花はなんというのですか？とワタシが彼に問うと彼は笑って今日のお前は変わっているな，と言った。
◼◼はいつもと変わりませぬとワタシが言っても彼は笑ったまま。
桜だよと彼はワタシに言った。
そうか，桜か…確かに桜だ。どうして忘れていたのだろう。
川の水面が陽の光を反射してキラキラと輝いている。
眩しくて目を細めると雲が太陽を隠したようで辺りが少しだけ暗くなった。
［リン］
鈴の音が響いく。
「＊＊」
歩きながら彼がワタシの名を呼ぶ。
名は呪いだ。最も簡単に相手を縛る方法，それは名を呼ぶこと。
名を呼ばれて気づく。
ワタシは彼に決して勝てぬのだと。
そう思った途端，目に映る全てが忌々しく思えた。
彼の笑顔も桜の花びらも陽の光も春の匂いも例外なく全て。
ワタシは彼が嫌いだ。
嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで嫌いで仕方ない。
彼はこちらを向かない。黙って歩き続けている。
今なら勝てるだろうか？
その細い身体に手を伸ばそうとした時，暗闇がワタシを覆った。
［リン］
夢が終わったのか辺りは闇に包まれている。
［リン］
悲しそうに鈴が鳴いた。
私は暗闇に向かって「何がそんなに悲しいのか」と聞いた。
暗闇は何も答えてくれない。また鈴の音が響いた。
私は音のする方へ歩き出していた。
歩いている間も鈴は悲しく鳴き続ける。
歩いていると，つま先に何かが当たって転がった。
銀色の小さな鈴だ。
鈴を拾い上げ目線を戻すと。暗闇のスクリーンに異国の屋敷が映っていた。
男が一人机に向かって筆を走らせていた。
辺りにはぐしゃぐしゃになった紙がいくつも転がっている。
「何故…何故，何故勝てぬのだ」
と彼は呟いていた。
彼の中にあるのは怒りと嫉妬だけだった
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黒薔薇の奏者(プロフ) - あずきバーさん» あずきバーさん，コメントありがとうございます。語彙力鍛えて書いていくのでこれからもよろしくお願いします！ (2020年12月30日 7時) (
レス) id: 085c5a58d3 (このIDを非表示/違反報告)
あずきバー - もう…好き(語彙力なくてごめんなさい！) (2020年12月29日 23時) (レス) id: fcf5e20872 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒薔薇の奏者 | 作成日時：2020年12月14日 19時
