【文豪ストレイドッグス】太宰妹の非日常で日常的な探偵生活。【マフィア時代あり】 (ページ9)

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熱と思い出【太宰治】ページ9

～太宰Sibe～

Aが熱を出した。

滅多に体調を壊さないAが、だ。

それも、Aは愛おしい私の妹。

当然放って置くなんて出来ない。

「ハァ～～～……Aに会いたい……帰りたいよぉ……」

書類で作った紙飛行機を国木田君に向けて軽く放つ。
紙飛行機は徐々に落下していき、国木田君の頭に刺さってしまった。

Aが熱を出して放って置けないのに……私は仕事だ。

やる気も出ない……先刻から溜息ばかり吐いては机に伏せている。

「だ～～ざ～～いぃ～～……貴様、書類で紙飛行機を作るな!!」

「国木田君……A、寂しがってないかな、泣いてないかな、悪化させてないかな……嗚呼、心配だよう……拗らせたら如何しよう……」

力無く顔を伏せて項垂れる私に向かって、国木田君は私の頭上に溜息を落として来た。

「Aは健康体なのだろう。
実際アイツは一年に風邪を引くか引かないか、だ。心配は無いと思うが」

早くAの所に行って遣りたい。

きっと寂しがってるよ……子兎の様に震えている筈だ。
嗚呼可哀想に……。

「……。
……ハァ……もういい。
太宰、帰れ、このままでは貴様の仕事など片付く筈がない」

「!国木田君」

「Aが可哀想だ」

私は表情を明るくさせ、すぐに帰り支度をした。

そして直ぐに社を出て、息切れがするくらい大急ぎで走って下宿に帰った。

「A!!」

「…っお、にいさま……?」

朝と同じ光景だ。

布団の上で苦しそうにしているA。
頬を赤くさせ、瞳が潤んでいる。

苦しそうに、息が乱れていた。
そんなAの手を、両手で取ってやる。

「仕事、は……」

「Aが心配でね」

「ッ……!?
済みません…私が不甲斐ないせいで、また……御兄様に、ご迷惑をッ……」

横を向いたAの左目から、一筋の涙が零れ落ちた。

しかし、その言葉には一つの疑問が浮かんだのだ。

「また?」

「昔……私が熱を出した時、御兄様は…任務を放ったらかしにして帰ってきたではありませんか……」

涙声で私に云うA。

……嗚呼、あったなそんな事……その後中也にこっ酷く怒鳴られたっけ……中也も心配だったクセに。

「……私は迷惑何て思ってないよ。
Aの事が大好きなんだ。だから之くらい当然の事さ」

「……御兄様」

やっと笑ってくれたAの頭を、くしゃくしゃと優しく撫でてやった。