6話 ページ7
―――◇ ◇ ◇―――
「……A、何で泣きそうな顔してんの？」
『え、いや。一虎が急に黙り込むから…
そっちこそ、泣きそうな顔してるよ。』
すると、一虎は大きく目を見開いて
自分でも、気づいていなかったのか、
涙が出ていないかを確かめる様に
目のあたりに左手を添えた。
「…え、俺は別に…」
『一虎、私のせいで昔の事とか思い出させちゃった？』
目の前の、色んな感情で揺れているであろう瞳を
みてゆっくりと問いかける。
「こういう時に察しが良いよな、お前。」
そう言って一虎はニコッと弱々しく笑った。
「Aさ、親に『お前はお父さんとお母さん、
どっちが好き？』って言われたらどう答える？」
『え、そりゃあどっちも、かな。』
だよな、っと一虎は今度はニッと歯を見せて笑う。
「俺もよく似たような事言われてたんだ。
母さんが父さんに殴られた後、絶対ルーティーン
のように言ってくんの。
『お前はお父さんの味方？それともお母さんの
味方？』ってさ」
「毎回青ざめた顔で聞いてくるんだよね、
あんな家庭環境だったから親に好きも嫌いも
無かったし。そんでさぁ、『どっちもはダメ、
どっちかよ。』って必ずどちらかを選ばなきゃ
いけなかったわけ。
今思えば、母さんはただ俺に味方でいてほしかった
んだろうけど、あの時の俺、何も言わなかったなぁ」
ここまで言われてやっと気付いた。私のあの時の、
あの発言は一虎の呪いの言葉そのままじゃないか。
『ごめん一虎、嫌なこと思い出させた。
今度からは無理に迫らないから…
決めた！たい焼きは一虎の分はどっちも買おう！』
「いや、そんな事しなくて良いよ、
金足んないかも知んないんだろ？
安い方で『あのね一虎。』…何？」
『今日で分かったんだけど一虎はもっと欲を
出して良いと思う。どっちが良い？って
言われたらね、どっちも大切なものだったら
どっちも！って思い切って言って良いんだよ。
私たちなら我儘だって沢山言って良いんだよ。』
俯いている一虎に近付き、私一虎が粒あんと
カスタードどっちも美味しそうに見てたの知って
るよ？っと一虎に歩み寄って笑いかける。
「………そっか、そうだよな。ありがとな、
A。俺、もっと我儘になる！」
『うん、我儘になる！はちょっと違うと思うけど
どう致しまして！』
急な我儘になる宣言には驚いたが、吹っ切れたよう
に笑う一虎を見て自然とこちらも笑顔になった。
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作者 - ロキロカさん» ありがとうございます泣！読者様からのコメントは作者のモチベに繋がるのでとても嬉しいです！ (2021年8月20日 18時) (
レス) id: 708145775c (このIDを非表示/違反報告)
ロキロカ - この小説大好きです！これからも更新頑張って下さい(*^o^*) (2021年8月20日 17時) (レス) id: b7f1a55b66 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年8月20日 0時
