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23話 ページ24

「綺麗事ばっか言ってんじゃねぇよ!場地はな、
芭流覇羅への忠誠を確かめる為に壱番隊副隊長を
踏み絵にしてから入ったんだよ。」

彼の雰囲気から怒りが湧いてきているのが分かる。
そうか、私の言うことは一虎には綺麗事に聴こえたか
何か言い返そうとしたが、余計な口出しするのも事態
を悪化させてしまうと思い、口を閉じた。未だに鉄
の味が口の中で気持ち悪いほど広がっていて、口の端
から血が滴り落ちる。それは痛みと比べて単純にショ
ックの方が大きかった。
一虎は女を殴らない。それはマイキーに憧れていたか
ら。東卍メンバーもマイキーを敬っている為、勿論女
を殴らないし一般人にも手を出さない。なのに、だ

「何、まさか俺に傷付けられるとは思わなかった?
安心してよ、ハロウィンの日はもっと痛めつけてあげ
るから。」

また鈴の音を鳴らして、小さい子を宥めるかの様に
一虎は優しく言った。




フー、と深呼吸して目の前の一虎をじっと見据える。
体が微かに震えて、泣きそうで、でも殴られたぐらい
で泣きたくなくて、でも自分を殴ったのがかつての仲
間で、その事実にまた涙がこぼれそうになって、目頭
が熱くなるのを知らないフリして、私は精一杯の意地
を張る。


『今ならまだやり直せるよ、一虎。
私が幸せにしてあげる。』

そう言って手を差し出した。どれだけ上から目線なん
だ、って話だ。意地を張って、話の路線を180度回転
して。自分でもハキハキと発した言葉に驚いたが恐ら
く心の底で密かに感じていたこと。

「は、……?」

当の一虎は余りにも予想外の事を言われたのか目をこ
れでもかと大きく見開いて私との間に何か強力な壁が
出来たかのように、2歩ほど後ずさった。その一瞬、
瞳の奥に昔の、迷い子のような一虎が映ったような
気がした。


『これまでもこれからも、一緒に背負って行こう。』

一虎ならこの意味が分かる筈、お互い現実のから逃げ
ている者同士、2人なら支え合える。差し出した手は
その意味が込められている。

「どんだけ目線なんだよ、それプロポーズじゃねぇか」


彼は、私を見て一瞬だけ薄く微笑み、そして窓の景色
を見て、今度は時計の方を見て、目を細めた。

「もう、取り返しようがねぇんだよ…、こうするしか
方法が分からない。」

と、呟いた。恐ろしく落ち着いた声で、全てを諦めた
かの様な、脱力した声だった。カチカチと進んでいく
秒針を目で追いながら、一虎は儚い雰囲気を放って
いた。

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作者 - ロキロカさん» ありがとうございます泣!読者様からのコメントは作者のモチベに繋がるのでとても嬉しいです! (2021年8月20日 18時) (レス) id: 708145775c (このIDを非表示/違反報告)
ロキロカ - この小説大好きです!これからも更新頑張って下さい(*^o^*) (2021年8月20日 17時) (レス) id: b7f1a55b66 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2021年8月20日 0時

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