外伝「横」 ページ39
「ぶっちゃけさ、Aちゃんに惚れたきっかけは?」
「……お前と同じだろうな」
「……え、いつそれ」
修学旅行の時、と言うと「俺もその場にいたかったっっっ」と大声で叫ぶ。周りに迷惑だからやめてほしい。
にしてもそうか、分かってはいたが付き合ったか。元々お似合いだったし、実際2人の明るさのおかげで高校生活が楽しかったのは事実。
隣にいる萩が、赤城と付き合ってる。優しくて、可愛くて、明るくて、そしてとても強いあの赤城と。
「まあそういう事だからさ、今後ともよろしくという事で」
「ああ」
「Aちゃんも俺も、陣平ちゃんとはずっと一緒にいる予定だから。3人でいる時は何も気にしないでほしい」
「……赤城がそう言ったんだろ」
「バレた?」
まあ俺も松田だから許すけどね、と笑いながら萩は言った。
アパートに戻り、課題を済ませてから横になる。
おめでとう、とは言えなかった。素直に祝福は出来なかった。理由なんて分かりきってる。……なんで彼奴に惚れてしまったんだよ俺は。
彼奴に惚れる前から俺は気付いてた筈だ、萩と彼奴が両想いじゃないかって。しかも直前には確認までして本人の口から聞いた。……あんな言葉聞いちまったからだ。
横になって感情を整理する。祝福の感情なんてない。悲しい、悔しい、辛い。
あんな場面見ておいて、未だに望みがあるのではないかと勝手に思っていた。無い事なんて分かりきっていたのに。本人から改めて言われたとき、「もう無理だ」と現実に戻された。
赤城を見た訳ではない、だが萩を見ただけで分かった。あの二人は幸せだ。
恋愛というものが、まさかここまで精神に来るものだとは思ってもなかった。恋愛が人生を決める要になっている理由が理解出来た、そりゃあ恋愛結婚が一般的になるわけだ。
今後、彼奴らを見て素でいられるだろうか。彼奴らを見て正気でいられるだろうか。……何にせよ、俺の気持ちは彼奴に伝えることは出来なさそうだ。
高1から惚れている萩と、その萩からのアタックで惚れた赤城。3年の頃には赤城の前までのイメージはほぼ消えて、学校のマドンナのような人になった。学校一のモテ男と学校のマドンナ。勿論噂にはなっていた。
ああ、視界が潤んでしまう。なんでこんなに悲しいんだ、なんでこんなに辛いんだ。もう、こんな想いしたくない。一生味わいたくない。
こんな事になるなら。
「彼奴に惚れるんじゃ、なかった……」
オオデマリの横で。
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御子柴(プロフ) - 鹿島さん» 最後まで読んで下さりありがとうございます!失恋の気持ちを少しでも味わってくれて嬉しく思います。次作がいつになるかはまだ分かりませんが、これからもよろしくお願い致します! (2021年5月20日 19時) (レス) id: 7b8ac9f247 (このIDを非表示/違反報告)
鹿島 - 完結おめでとうございます。外伝「横」で本編では語られなかった松田さんの赤城さんへの思いが見え、タイトルも回収され、切なくとても心に響きました。この作品に出会えて本当に良かったです。これからも応援してます。 (2021年5月17日 22時) (レス) id: 5cf1e8a67b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御子柴 | 作成日時:2021年4月29日 11時