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その後もスキーを楽しみ、温泉を満喫。萩は先に戻り、俺は少し椅子に座ってゆったりしていた。
その時、少し遠くの方でクラスメートの声が聞こえてきた。赤城の陰口を言っている女達の声だ。しかもかなりトゲのある言い方、……もしかして赤城がその場にいるのか。
「つか最近調子乗ってるよね。萩原君と松田君と行動してさ」
「主役やって人気出たからねー、そりゃあ勘違いもしちゃうかぁ」
「私が主役やれって言わなかったら陰気臭いままだったけどね」
「依怙贔屓されて男誑かして……修行ってなんですかー?」
「「アハハハハッ」」
なんつー言い草、此奴ら赤城の努力も知らないで何ほざいてんだ。何も知らないくせに、何わかったフリして我が物顔で言ってんだ。
少し移動して、彼奴らが見える位置にまできた。向こうはこっちのことなんか見てすらないだろう。胸糞悪い会話はこれだけでは無かった、赤城の表情は分からない、こっちからだと見えない。
「てか今どき工芸美術とかダサいわ」
「本当それな、いつも臭いし汚いし」
「そんな奴が萩原君の隣にいたと思うと……うわ、萩原君可哀想すぎない?」
「つか本当に職人になりたいわけ?私からすると萩原と松田にチヤホヤされたいだけなんじゃないって思うけど」
「それ。そもそもあんた職人向いてんの?別に絵も凄い上手いわけじゃないでしょ」
「わざわざ地方から来る程の腕前とは思えないわ」
赤城は何も反論せず、ただただ女共の言葉を聞いていた。女共はまだ赤城に暴言を吐く、ほとんどが職人の事をバカにした言葉だったり、夢は叶わないと否定したり、赤城の本質とも言える部分の事だった。
赤城への暴言を聞き俺はいてもたってもいられず、そいつらを殴り飛ばそうと思ったその時だった。
今まで黙っていた赤城が遂に口を開いたのだ。
「好きに言えばいい、それであんた達の気が楽になるなら」
「……はぁ?」
「私には私のペースがある、私の道がある」
「……何一人前気取ってんの?」
「プライドがあったら悪い?流石に工芸美術の事バカにされたらこっちも堪忍袋の緒が切れるわ、私は必死に頑張ってる」
「な、何……」
「私は私のペースで道を歩く。あんた達にどう思われようと構わない、関係ない」
今後もそうやって陰口言って嫌われていけばいい、赤城はそう言ってそのままエレベーターの方に歩いていった。
俺の心に何かがストンと落ちてきた。
なるほどな萩、そりゃあ言いたくないわけだ。
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御子柴(プロフ) - 鹿島さん» 最後まで読んで下さりありがとうございます!失恋の気持ちを少しでも味わってくれて嬉しく思います。次作がいつになるかはまだ分かりませんが、これからもよろしくお願い致します! (2021年5月20日 19時) (レス) id: 7b8ac9f247 (このIDを非表示/違反報告)
鹿島 - 完結おめでとうございます。外伝「横」で本編では語られなかった松田さんの赤城さんへの思いが見え、タイトルも回収され、切なくとても心に響きました。この作品に出会えて本当に良かったです。これからも応援してます。 (2021年5月17日 22時) (レス) id: 5cf1e8a67b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御子柴 | 作成日時:2021年4月29日 11時