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劇当日、午前ではC組がオリジナルの劇を披露した。午後の部の体育館のスケジュールは、俺達のクラスの劇と得点発表だけだ。要するにトリである。
全ては赤城の最初の曲「サウンド・オブ・ミュージック」で決まる。……だが大丈夫だろう、赤城の表情はとても柔らかなものだった。
既に客が沢山いるので大きな声は出せないが、皆で円陣を組み気合いを入れた。そして少しして、開演のブザーがなる。
最初の前奏が鳴り始め、赤城がステージへと出ていった。そして歌が始まると同時に、舞台袖にいる俺達まで一気に惹き込まれる。既にここは日本ではなく、オーストリアだ。
そして、萩が演じているトラップ大佐も凄く良い。萩はあんなに演技が得意だったのかと感心する。冷酷のように見えて、実は心の暖かい人。いつも明るく人気者の萩からは想像もつかないが、少し低い声だからか、雰囲気が良いからか、またこれで惹き込まれる。
赤城はとてもキラキラとした表情をして、演技をしていた。まるで新人女優のようだ。一つ一つの繊細な演技がこの体育館という広い中でも観客に伝わっていく。何より、赤城本人が楽しそうだ。
俺の前半の出番は終わった。席を立ち上がる人は少なく、寧ろどんどん客が増えてきた。座る席がなく、後ろで立って見てる人もいる。
赤城は舞台袖に入った時一瞬で水を飲み汗を吹き、次のセットになったらすぐ出ていく。プロのようだ。疲れたように見えない、見せていない。たかが高校生だと言うのに、俺と同じ高校生だというのに、全く俺とは違う。
そして、俺のイチオシシーンがやってきた。横からだと残念ながら萩の姿しか見えない。だが横からでも伝わるくらい甘い空間なのは確かだ。
暗転して、萩と赤城がこっちに来る。俺の出番も近づいてきた。そんな中、萩と赤城の会話が聞こえた。
「ねぇ萩原君、さっき」
「ごめん、事故。気にしないで。最後まで頑張ろう!」
「……分かった、成功させよう」
どうやらさっきのシーンで何かアクシデントがあったらしい、俺からは特に何も見えなかったので、客からも分からないようなものだろう。
その後、失敗は何一つなく最後の「すべての山に登れ」を歌い終わり、カーテンの方の幕が閉まっていく。観客からのスタンディングオベーションと共に、ミュージカルは大成功し、俺達の文化祭は終了した。
もちろん2年の順位は1位で、何と総合優勝もした。前の方で、マリアの衣装を身にまとった握り拳が高く挙げられていた。
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御子柴(プロフ) - 鹿島さん» 最後まで読んで下さりありがとうございます!失恋の気持ちを少しでも味わってくれて嬉しく思います。次作がいつになるかはまだ分かりませんが、これからもよろしくお願い致します! (2021年5月20日 19時) (レス) id: 7b8ac9f247 (このIDを非表示/違反報告)
鹿島 - 完結おめでとうございます。外伝「横」で本編では語られなかった松田さんの赤城さんへの思いが見え、タイトルも回収され、切なくとても心に響きました。この作品に出会えて本当に良かったです。これからも応援してます。 (2021年5月17日 22時) (レス) id: 5cf1e8a67b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御子柴 | 作成日時:2021年4月29日 11時