02.もしかして、嫌われてます? ページ9
「伊黒先生ってさ、多分私のこと嫌いだよね」
「……え?」
昼休み、私がそう呟くと炭治郎は目をぱちくりさせた。余程驚いたのか、箸で摘んでいた玉子焼きを見事に弁当箱へスローインさせてしまったぐらい。よぉっ、ナイスシュート。
「すまない。少し情報が追いついていない…………伊黒先生はAを嫌いって言ったのか?」
「うん」
「なんでそう思うんだ?」
「だってさぁ、炭治郎もこの前の見たでしょ? あの地獄のお説教」
情景が目に浮かんだのか、炭治郎は苦虫をかみ潰したような顔になった。
本当にあれは酷いものだった。最早、脳が生命の危険を感じているのか、カウンセラー室での出来事は何一つ覚えていない。
けれど、近くを通る度に、震えというか、痙攣に似た感覚が体中をビンビン巡るのだ。
「しかも、後から部活の子に聞いてみたらさ、伊黒先生に叱られたことがないっていうんだよ?」
「つまり、それで、Aは伊黒先生に嫌われていると思ったのか」
「そう」
「でも、Aと話している時の伊黒先生からは、嫌いとか苦手だとかの匂いはしないぞ。……ほら、愛の鞭っていうだろう?」
炭治郎が真顔であり得ないことをいうので、つい、かっとなる。
「あんなんが愛でたまりますかっ!! 愛の鞭だったらこんな死にかけなんかしないし、そもそも、あの人から愛なんぞを受け取りたくもない!!」
鼻息荒く返したところで、罪悪感を覚える。しまった、炭治郎は悪くないのに。ごめん、と直ぐに謝れば、炭治郎は少し笑って、気にしなくていいよと言った。
「嫌じゃないのに、厳しいのはなんでだろうな……」
「ん……、分かんない」
うーん、と二人して首を傾げる。
可愛い子には旅をさせよ、という言葉もあるが、例の愛の鞭と同じく、分類が違う気がする。
かといって、炭治郎に限って嘘を云うはずもないので、伊黒先生が私を嫌いではないというのは真実なのだろうが…………
(ちょっと、信じられないなぁ)
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←大正コソコソ噂話[1]
13人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ