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とんでもなく痛い視線を感じて、恐る恐る顔を上げれば、案の定、緑と黄色の双眼に、ギロリと睨まれた。
「今、何時だと思っている」
「……えーっと、これには深い訳が」
「何時だと聞いているんだ」
「は、はいィッ!!」
戦慄を覚えて、背中をしゃきっと伸ばせば、白衣の中に隠れた指 (謂わば萌え袖状態のもの、なのだが) が私を指した。
片眉を下げてみせる先生に、限りなく小さい声で「1時57分です……」と答える。
伊黒先生は、盛大なため息を付いた。
「5時限目が始まるのは一体いつだ?
お前の時間は無限か。それとも止まっているのか。……まさか5時限目がいつから始まるかを知らない筈はないだろうな?」
「ス、スミマセン」
恐れていた事が現実になって、身を縮める私に、さらに伊黒先生が畳み掛ける。
「お前、そういえば昨日の部活もいなかったと聞いたが、まさか本当に時間がわからないのか? 甘露寺が困っていたが」
「えっ。昨日は部活休みだったんじゃ……」
「口答えをする気か、いい度胸だn」
「すみません今すぐ忘れてください。何でもありませんでしたですはい」
先生の瞳の奥に恐ろしいペットボトルが見えたので光の速さで礼をかます。
平謝りとはまさにこの事だなんて、口が裂けても、言えはしないけど。
あ、あと蜜璃先輩、ごめんなさい。
強いて言うなら、顧問でもない伊黒先生がどうして私が無断欠席したのを知ってるのかを知りたいものだが、まぁ黙っておこう。
兎に角、今は早く教室に戻らないとやばい。
「すみません。次からはもっと時間に気をつけて行動します」
女子たちの格好のマトにはなりたくないんです。
煉獄先生には嫌われたくないんです。
半ば、縋る思い出頭を下げると、伊黒先生は暫く私を睨んでいたものの、フンと鼻を鳴らして去っていった。
え、去ったほんとに?
あのネチネチが?
授業に入るまで足止めされると思っていたので、少し驚いた。
本当に廊下を引き返してこないか、見送ってしまったぐらいだ。けれど、伊黒先生が向こうから戻ってくる事はなかった。
はぁああ、びっくりしたよホントに。
こんな所で止められるなんて最悪すぎるって。
何なんだよぉおお、ちょっとぐらい見逃してよぉ。
内心、ぶつくさ呟くものの、それすらもチャイムに邪魔されてしまった。
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