10個 ページ10
___侑side
ぼっくんに勢い良く飛び込んで来た小柄な女性。
赤葦くんと一緒におるところからして
高校時代の友達か、あるいはそれ以上の関係か…
にしても可愛ええ子やな。ええな、何にしたってぼっくん羨ましいわ
ぼーっと彼女を見ていたら、彼女も不思議そうに俺を見とった。
赤葦くんが、その…Aちゃん?の隣でコソコソと何か話しとる
そんでめっちゃ驚いた顔して俺ん所までまっ直線に歩いてきて
距離詰めてまじまじと顔見てくるから不覚にも少し照れてしもた。少しな。ほんまに少しだけな。
「…え。ちょ……なん、」
『んんん?』
不意に背後から赤葦くんが、今度は俺に耳打ちして来よった。
「侑。この子…治の言ってた、」
…ああ、サムが言うてたな。何ヶ月か前から毎日飽きもせんと言い寄って来よる女が居るって。
それが、この子やいう訳か
その感じ、サムが双子やっちゅー事も
俺ん事も知らんかったんやろな
『……あぁ。言われてみれば似てる…気もしなくもない。全然気が付かなかった』
「…は」
分かるやろ、双子やねんぞ。気づくやろ…普通。
「自分、俺の片割れん事好きなんやろ?」
『へ?!なんでそれを!?…まあそうだけど』
「全く相手にされてへんらしいやん。…なぁ、あいつ辞めて俺にしてみいひん?顔一緒やし」
細い指先を控えめに握って
彼女に目線を合わせるように屈み、目を細め笑った。
ほんの好奇心やった。どんな反応するんやろって。
いつもみたいに、きっとこの子も
俺がちょっと言い寄ったら、どうせ…なんて思て。
やのに、
『顔全然違うし、私は宮さんしか興味ないので!』
「…へぇ」
真っ直ぐに俺を見て、首を横に振る彼女。
正直、他の女どもみたいに靡いてくれたらええのに。って一瞬思てしもた。
サムにばっかり興味持っとるAちゃんがなんや気に食わん。
なあ、俺にも興味持ってや。なんて
よう分からへんけど胸が苦しなった。
「…ははっ、冗談やて。相談乗ったるから仲良ぉしてや」
『ほんとに!?よろしくね!』
「ん。…まずは名前な?侑って呼んでや」
『分かった、侑って呼ぶ!私もAでいいよ』
「おん。よろしゅうな、A」
この時俺は、
仲良くしようなんて 相談乗るなんて
言わなきゃ良かったんや。
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作者名:OX | 作成日時:2021年8月27日 8時