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『そういう意味ですか!』
「さあ?」
『ちょっと!宮さん!』
「冗談かもな。多分」
『なんだやっぱりそうか…』
「っていうのも冗談やで」
『え!?どっちですか!』
「どっちやろな〜」
『…もうっ!前にも言いましたけど私、宮さん一筋なので!!諦めませんからね!』
「…そんなに俺なんかのどこがええの?」
『それ聞いちゃいます?
えーっとまず…一目惚れのきっかけになったふわふわした笑顔に加えて国宝級イケメンでしょ。
そのちょっと眠そうな目、可愛いです。癒されます。
あと友達と会話してる時と、真剣に仕事してる時のギャップ。
それから、』
「ま、待って、もうええよ」
『え?まだありますよ。
例えばお子さんやご老人への対応が神。
ちょっと癖のあるお客さんにも嫌な思いさせないように気遣ったり
休憩から気だるそうに戻ってきた時は色気やばいです。それから溢れ出る優しいオーラとちょっと低めの声と、』
「ス、ストップ!ストップ!!わ、分かった!もう大丈夫や!」
『え〜まだまだあるのに』
「…はあ。ほんまに俺の事大好きやな」
『ええ、めっちゃ大好きです!』
見上げた先の彼の表情は
暗い夜道に隠れてよく見えなかったけど
その声色はとても穏やかで優しかった。
『家、あのアパートなのでここで大丈夫です』
「うっわ…道暗、こわっ。危な」
『そうですか?もう慣れました』
私の家へと続く細い一本道は、街灯がひとつも無いので確かに真っ暗だ。
最初こそ怖かったけどもう流石に慣れた。
怖いよぉ…なんて言う程、乙女じゃないし。
それじゃあ、とお別れしようとしたら
また背中をぐいぐい押されて結局アパート前まで送ってもらってしまった。
結構強引な所があるんですね。新しい宮さん発見出来て嬉しいです。
『わざわざすみません。お仕事終わりでお疲れなのに…ありがとうございました』
「仕事終わりなんはお互い様やろ。ほれ、はよ家入り」
『はい。あ…そうだ』
ずっと羽織らせて頂いていたパーカーを脱ごうとしたら
宮さんの手によってそれは叶わなかった。
「後で返しに来ぃや」
『へ……あ…ハイ』
「ん。おやすみ」
『お、おやすみなさい』
満足そうな笑顔。
私に向けて笑ってくれることはそうそうないから
嬉しくて泣きそうになった。
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作者名:OX | 作成日時:2021年8月27日 8時