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おに宮に行かなくなったけどあの味が恋しいし
大好きな人のお店だから貢献したい
という私の気持ちに気づいてくれた侑と角名くんは
時折おにぎりを買って届けてくれて感謝してもしきれない所存
「…Aさん、これが例のブツ(おにぎり)です」
『おう角名、よくやった。…誰にも見られてないだろうな』
「はい勿論です。そんなヘマしません」
『よし、これは今回の報酬だ。取っておけ』
「ありがとうございます」
「Aせんぱぁーい!おにぎり買ってきましたぁ!」
『…おいコラ侑。私が頼んだのは鮭じゃねえぞ辛子明太子だぞ』
「すんません辛子明太子が売り切れしもて…すんません命だけは…!」
『今日のところは許してやろう』
「あざす!さすがっす先輩最高っす!」
なんて茶番付き。
帰り道のルートも変えた。ちょっと遠回りだけど
おに宮を通らない裏道を見つけた。
裏通り、たくさんある細い道のうちの一本は
おにぎり宮の裏口へと繋がっていることも知った。
タイミング良く、ゴミや空き瓶を外に出す治くんの姿を
遠目で見かけた日は発作が起きて好きだと叫んでしまいそうになる。
こんな生活もかれこれ2ヶ月…くらいだろうか
うん、多分そのくらい
そんなある日のこと。
仕事帰り、自宅近くのスーパーに寄りお会計を済ませ
自動ドアを抜けた時だった
「…あれ、Aさん?…Aさんっ!」
『ん?あら渡辺くんお久しぶ「なんで最近来へんのです!?」…の゛お゛お゛お゛お゛揺゛ら゛さ゛な゛い゛で゛え゛』
お店の買い出しの渡辺くんと鉢合わせた
肩を強い力で掴んでくるしめっちゃ前後に揺らされた。これ震度4はあるぜ絶対
あとバイトから社員に昇格したんだって。おめでたい
「なんで!」
『おっおちっ落ち着いて』
やっと解放された体、というか肩。袋の中の卵は…無事だ。良かった
「最近!全然!」
『う、うん、いや、自炊しようかなって』
「絶っ対嘘や」
『…元カノさんは、お店来てる?』
「相変わらずよう来てはります」
『そか』
時間の問題、だろうな
「ねえAさん今から店来ません?最近店長、」
『や、私が行ったら迷惑になるから…。あっもう行くね?
お仕事頑張って!あと昇格おめでと!こんなので悪いんだけど、』
ご褒美用に買った高めのプリンと飲み物を渡して
何か言いたげな彼に背を向けた
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作者名:OX | 作成日時:2021年8月27日 8時