おにぎり宮の店主さんに一目惚れした【宮治】 (ページ27)

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車も通らない静かな夜道

長身の宮さんに背負われていると
視点が高くていつもの帰り道もまるで世界が違うな。

｢…最近顔出さへんかったのは残業続きやったからか｣

沈黙が続いた後

ボソッと呟いた彼の言葉に、頷いた。

｢…家までもーちょいやから
もう少しこのまま我慢してな｣

私なんかにも優しくしてくれる宮さん。

本当に、本当に、

『……好きぃ』

｢…おう。知っとる｣

一人の時はあんなに遠く感じていた自宅までの距離が
ほんの数分に感じる。

『…離れたくないなぁ』

溢れてしまった言葉はきっと、聞こえてないはず

まだこうやって一緒にいたくて

彼の首にまわした腕にきゅっと少しだけ力を込めて顔を埋めた

『本当にありがとうございました』

玄関の中で降ろしてもらい、失礼だとは分かっているけど
立っているのが辛くて壁に体を預けながらお辞儀をした

｢…すまん、ちょぉ邪魔するで｣

宮さんは難しい顔をして少し黙った後、ひょいっと私を横抱きにして
ずんずんと部屋の中へと進んでいく。

私の家に上がっている…？これ夢？強めの幻覚？

『待って、近い』

おんぶなんかより断然距離が近いし。どうしよう生理痛なんて吹っ飛びそう

｢突っ込む所そこかい｣

ベッドに優しく降ろされ、宮さんは私と目線を合わせるように屈んだ

｢ちゃんと暖かくして軽くでええから何か食って薬飲んで寝ぇや｣

『ハイ…』

｢あと、｣

『あと？』

｢この前店来た時、俺に何か言いかけてたやろ｣

『あ…』

未だお出掛けに誘うことが出来ぬままだった。

そんな事、覚えていてくれたんだ…

｢今度その続き、聞かせてや｣

こんな優しい顔した宮さん、初めて見た。

胸が締め付けられ息が止まりそうで上手く声が出せなくて、頷く事しか出来なかった。

｢…鍵、ポストん中入れとくからゆっくりしとき｣

『なんかカップルみたいですね？ふふふ』

｢それは強めの錯覚やな｣

『知ってますか？一目惚れから始まる恋って
長続きするらしいですよ。どうですか？』

｢はあ。こんな時でもブレへんのな｣

『いやそれほどでも』

｢褒めてへんわ｣

おやすみ、と私の頭を撫でて
宮さんは家から出ていった。

『…え。私の…頭を………撫でた…？』

いつかのように

思考が纏まらない私を置き去りに。