続・家政婦【宮侑】 (ページ3)

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＿２(侑side) ページ3

脱脂綿を持った彼女の伏せた瞳は虚ろで。
何故か目が離せなくなりぼーっと見つめていたら視線が不意に交わり、ドクンと心臓が跳ねた。

女と2人きりなんて別に平気な筈なんに
今こんなに緊張してんのは多分、目の前の彼女が俺の周りには居らへんような、少し大人びた雰囲気やから。

『金髪くん、何年生？』

｢1年。っちゅうか金髪くんてなんやねん！侑や、宮侑｣

思わずでてもうた自己紹介に反応はなく
俺の肘を消毒しとる手を止めて、Tシャツの袖口に目をやり
少し顔を顰めながら首を傾げる

『いなり…ざき高校？って何県？』

｢兵庫や｣

『へえ、兵庫かあ。いいね、イケメン関西弁男子』

へらへら笑って、そう言うた思たら
俺の手をちっこい両手で包んだ。

『…手、綺麗だね』

｢なん！？｣

そんで、しみじみそう言うもんやからいたたまれなくなって
勢いよく手を引っこ抜いた。

触れられた場所が、顔が、体が熱い。
エアコン壊れとるんちゃうか。しっかりせえや。夏はこれからが本番やぞ。

｢お、俺ばっかりやのうて自分も名前くらい言ったらどうなん！｣

『私？ AA。この学校の3年』

｢え。先輩やったん？すんません！｣

『いいよ別に。2歳なんて大して変わらなし
硬っ苦しいの嫌いだから敬語もさん付けもいらないよ』

｢そ、そっすか。あーっと、その、A…ちゃん、さ｣

緊張して上手く話せない。どないした、俺。

『ぶはっ！ぎこちなさすぎるんだけど！』

彼女はしゃがんで、今度は膝の手当てをしてくれる。
そんで、女慣れしてそーな顔して意外と可愛いね？と俺を見上げて笑った。

｢べ、別に普通やし！
あぁもう！なんなん！？調子狂うわ！｣

『ふふっ、おもしろ〜。はい、手当て終わり！
…で、Aちゃんさ、の続きは？』

中腰になり、ん？と俺の顔をのぞき込むように距離を詰めて来る。反射的に首を逆方向に捻った。いちいち近いねん。初対面やぞ、俺ら。

｢他の男にそない距離感近くしとったら
彼氏、嫌がるんちゃうか｣

『…彼氏？あぁ、もしかしてすれ違った？』

やっぱさっきの男と付き合うとるんか。
ちょっと嫌やな…なんとなく。

『付き合ってないよ。好きでもない』

｢え｣

でも絶対、そーゆう事しとったやん。
好きでもない奴と平気で寝るん？

『今考えてる事、全部合ってる』

彼女は表情一つ変えない。
北さんといいAちゃんといい、俺の考えとる事なんで分かんねん