続・家政婦【宮侑】 (ページ2)

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もしも学生時代に2人が出会っていたら＿１(侑side) ページ2

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高1 夏休み

稲高の部活に慣れてきた頃、音駒高校で合同合宿があった。

息が詰まりそうな蒸し暑さ。やっと外周も終盤。

俺は、盛大に転んだ。

｢ぷぷっ、侑く〜ん痛くないですか〜｣

｢うっさいわクソサム！余裕やわ！｣

幸い怪我したのは膝で、痛みもそこまでやし手も無事やった。
このくらい水で流しとけばいけるやろ。

｢侑、痛くなくても血ぃ出たまんまやと危ないやろ
音駒の保健室借りさせてもろて手当して来ぃや｣

｢うっ｣

北さんっちゅう男は心の声聞こえとんのか？
俺の脳内と会話しとんのか？
その目ぇ向けられると適当な事言われへんねん。

せやから返事は勿論

｢…はい｣

夏休みやし、校内は静か。
吹奏楽か軽音部か知らんけど楽器の音が微かに聴こえてくるくらい。

俺らん高校もだいぶ広いんやけど、音駒も流石。
そらもうなんや、とにかくデカい広い。東京って凄いわあ、なんて。

薄暗い廊下を室名札を目で辿りながら進んでくと
とある部屋から男子生徒が1人、出てきた。

やけに気だるそうに、はだけた制服のボタンを直して
ネクタイを締め直すそいつと、すれ違った。

その男が出てきた部屋の室名札は、保健室。

ちょっと嫌な予感を感じつつ、その戸を開けた。

｢失礼しまーす｣

薬品の匂いと、誰もおらん涼しい室内。汗ばんだ体が少しだけ、震えた

｢先生おらんのか。さっさと戻ろ。
絆創膏は〜っと…｣

『その棚の上の引き出し』

｢あっほんまや！おおきに…って、え？｣

無意識に零れる独り言、の筈が返ってきた返事。

驚いてその声を辿るように振り向くと
ベッドと室内を仕切るパーテーションから女子生徒が顔を覗かせていて。なんやねん。人、居ったんかい。

『ぷっ、驚きすぎ』

｢やってビビるやろ、独り言に返事来たら｣

やけに暑そうに、怠そうに、髪を手ぐして整えて、シャツの第2ボタンを留めながら近づいて来よる彼女に
ついさっきすれ違った、保健室から出てきた男の姿を重ねた。
俺も健全な男子高生やし。あぁ事後か、とすぐ理解した。

『怪我めっちゃ痛そ』

彼女の目線は俺の膝、やのうて肘に向いていた。
なんやねん…んな所、別に

｢…あれ。擦りむいとるやん｣

めっちゃしてた。怪我。

『気づかなかったの？』

｢膝だけや思てた｣

『手当てしたげる』

こっち、と手を引かれて
なんや断る気にもなれず、言われるがまま椅子に座った。