オタクなお兄様は、実に変人です。【桃】

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「あ、君を置いて話してごめんね。そろそろ皆来るかな？」

「ああ、そうだな。片桐ほらお前はこっち」

「あ、はい！」



ぺこりと阿部さんの横を通り抜ける時、阿部さんは私の肩に手を置いて引き止めてきた。

顔を向けると、ウインクされて「社長との関係はくれぐれも内密にね」と。

それだけ言うと「頑張って」と二回ほど肩を叩いてから、会議室を後にした。



「片桐？」

「はいっ」


えぇっ、なんか急に情報が色々なんですけど。


阿部さんが私を採用して、岩本課長と阿部さんは同期入社で、阿部さんは急に異動？なんのこっちゃ。



「ほら集中しろよ」


続々と会議室に人が入ってくる。

最後に大介さ……社長が入ってきたら、岩本さんが小さく言った。


そうだった。これが私にとって初の開発企画になるんだ。しっかりやらなきゃ！



挨拶をして席に座る時、社長と目が合う。


でも直ぐに逸らされて、ああそっか。


この場では私たちは赤の他人なんだよね。


最初にそう約束したんだから納得済みなんだけど、なんかそうあからさまに逸らされちゃうとほんの少し寂しく感じた。







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「君、ちょっといいかな？」




会議が終わり最後まで残って片付けをしていれば、最後まで残っている社長に呼ばれる。


岩本さんと視線があって、「先戻ってる」と出て行く背中に「はい」と返事してから社長の下へ。




「驚いた？」



椅子をくるんと回して私の前を向いた社長は、ニコッと幼子のように微笑んでる。


キョロキョロして周りに人が残っていないかと、めっちゃ確認する私。



「だーいじょうぶ！ さっきの彼で最後だよ。で、驚いたっしょ？」

「……はい。まさか自分がこの企画に関われるとは思わなかったので」




なんですか。会社では他人だよって言ったくせに。見られたらどうすんの？



「今回は少人数でする予定だったから、もうすでにチーム組んでたんだけどね。これお前のおかげで浮かんだとこもあるし、良い機会だから先輩達の仕事見て勉強してみ？」


くるんくるん、とよく回る人だ。

落ち着いてくださーい。



「作りたいんだよね？ 人の心に残るような玩具」



ピタリと止まって、大介さんは大きな瞳で真っ直ぐに見つけてくる。

うん、作りたい。

寂しさを埋めてくれた、楽しみを与えてくれた、キラキラした玩具を。



「一緒に作ろうな。心に残るもんを」






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