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「リサ先輩のこと好きだった？」
ペリ、かさぶたを剥がす音が鮮明に聞こえた。
治りかけのかさぶたは容易く剥がれて、剥き出しになった傷口がじくじくと痛む。
昔のことを思い出していて意識が逸れていた、それだけの言葉では済まされないことを言ってしまったと気づいた時にはもう遅かった。
どれだけ祈っても時計の針は巻き戻ってはくれない。
中学の時同じ部活で仲良くなって、そのまま同じ高校に進学した腐れ縁の友人。それだけの関係を崩したくなくて、話を逸らそうと発した言葉は確かに牛沢の傷口を抉った。
ただの言葉なはずなのに、心の柔いところを抉った感覚はたしかにこの手に残っていて、はっきりと焼き付いて離れない。
「好きだった、かな」
律儀で優しい彼はそれでも、自らを傷付けられても言葉を返すのだ。普段散々ゲスクズと言われている彼が本当はとても優しいことを私は知っていた。
今の私にはその優しさが痛い。痛くて痛くて堪らなくて、今すぐに逃げ出してしまいたかった。
「私のこといつから好きだったの」
「大分前、気付いたのは最近」
「じゃあ私は先輩の代わりなの？」
まずい、と思った時にはもう手遅れで、言葉が止まらなかった。
牛沢が大きく目を見開いて悲しそうな顔をするのを見てられなくて、聞こえるか聞こえないかくらいの小さい声でごめんと呟く。
はためくカーテンか頬を撫でる。行き場のない視線を下のグラウンドに向けた。野球部はまだ練習を続けてるようで、新入生の強ばった声が校庭に大きく響く。
「…あのさ」
気まずそうに切り出された一言に視線をそちらに向ける。悲しそうに歪められた顔を直視できずに、教室の埃の溜まった床板に視線を彷徨わせた。
「A危ないッ！！」
「、えっ？」
突如突き飛ばされて揺れる視界の中、ガシャンと音を立てて砕けるガラス、それを突き破って飛び込んできた野球ボール、私の上に倒れ込む牛沢。
私を庇って、牛沢が。
「牛沢、ぁ、」
乾いて掠れた声が君の名前を呼ぶ。答えることのない男子にしては小柄な体をいくら揺すっても、起きることはなかった。
砕けたガラスの音に気づいた先生達が牛沢を運んでゆく間も私は号泣していた。レト先生の白衣にしがみついて、いつまでも子供みたいに泣きわめいていた。
その日は頭の中にガラスの割る音がずっと反響して、泣き疲れていても眠ることが出来なかった。
次の日私は学校を休んだ。
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二楷堂 - はじめまして。この作品を読ませて頂いてとても面白いな、と思いました。メンバーも豪華で見応えがあります。これからもチームVinegarさんのご活動応援させて頂きます。 (2015年9月16日 11時) (
レス) id: 395e3ef2a2 (このIDを非表示/違反報告)
津紀(プロフ) - 楽しみだけど無理しないでね。大好きだゾ〜 (2015年9月15日 23時) (レス) id: 2f0b1601a1 (このIDを非表示/違反報告)
ハル@チョコレート食べたい系女子(プロフ) - 皆さん新作(?)おめでとうございます!! 始めからとても面白くて、次のお話はいつかなぁと楽しみにしています！ ご無理なさらず頑張ってください!! (2015年9月15日 23時) (レス) id: 2184a38450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チームVinegar x他2人 | 作成日時：2015年9月13日 2時
