「レモネードワンウェイ」Usizawa/Retort ページ14
*
「なあ、レトさんやめて俺にしない？」
とろとろと蕩ける春先のぬるい日差しが教室の窓から差し込み、床に机に光を零す。
桜の花びらを乗せてゆるゆると鈍重な風が吹き抜け、セーラー服のリボンタイを揺らした。
一向に進まないノートとのにらめっこに疲れ、気怠い昼下がりの空気感に欠伸を噛み殺す私と、行儀悪く机に胡座を書いて座り窓の外の野球部の練習風景を眺める彼、牛沢。
それはいつもの光景で、このまま終わらない日誌をほっぽり出してぐだぐだと駄弁り、日が沈んで暗くなってから慌てて日誌を仕上げるのまでがテンプレだった。はずなのだが。
「…え、？」
「だから、俺にしない？って」
先程までグラウンドを眺めながら、恐らく友達だと思われる野球部の人がボールを取り損ねる度に野次を飛ばしまくっていた彼が、ふと振り返って告げたその一言に緩い日常は容易く砕け散った。
「冗談はやめてよ、エイプリルフールはとっくに過ぎたじゃん」
冗談じゃない、そう言う彼の瞳は真剣で、曖昧に躱そうと準備していた言葉達を飲み込まざるを得なかった。
桜を乗せた春風がぶわりとカーテンをはためかせて、私達二人をここではない別のどこかへ連れていってしまいそうだと錯覚するほど、教室は静かでゆっくりゆっくりと時が流れていた。
そう感じただけで実際はそんなことなくて、ほんとは10分しか、もしくはもっと短い時間しか経っていなかったのかもしれないけど。
「…、本気？」
「本気。流石の俺でも冗談で告白しないわ」
「うそつき。この前湯毛先輩達とゲームした時罰ゲームでリサ先輩に告白したでしょ」
「なっ、んで知って、」
「キヨから聞いた」
あんの野郎、と拳を震わす牛沢の頬は赤くて、耳まで真っ赤で。本気でリサ先輩のこと好きだったのかなって思ってしまう。
「どうだったの？」
「…断られた、他に好きな人いるって」
「そっか、」
どうしてかその後に続く言葉が出てこなかった。ドンマイって励ましてもいいし、ざまぁって馬鹿にしてやってもよかったのに。
いつもだったら躊躇いもなく馬鹿にしてて、それで重い雰囲気は消えてたはずなのに、どうしてだろう。
どうしようもなく息が詰まって、いつも一緒にいて楽だと思っていたのに、こんなに牛沢と喋ってて息苦しいことは初めてだ。
呼吸が変に難しくてもどかしくて、君の真剣な視線に溺れるのを逃れるために曖昧な言葉を紡いで、それで僅かばかりの延命処置。
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二楷堂 - はじめまして。この作品を読ませて頂いてとても面白いな、と思いました。メンバーも豪華で見応えがあります。これからもチームVinegarさんのご活動応援させて頂きます。 (2015年9月16日 11時) (
レス) id: 395e3ef2a2 (このIDを非表示/違反報告)
津紀(プロフ) - 楽しみだけど無理しないでね。大好きだゾ〜 (2015年9月15日 23時) (レス) id: 2f0b1601a1 (このIDを非表示/違反報告)
ハル@チョコレート食べたい系女子(プロフ) - 皆さん新作(?)おめでとうございます!! 始めからとても面白くて、次のお話はいつかなぁと楽しみにしています！ ご無理なさらず頑張ってください!! (2015年9月15日 23時) (レス) id: 2184a38450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チームVinegar x他2人 | 作成日時：2015年9月13日 2時
