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記憶は網目状に複雑に絡んでいて、一つの物事を思い出せば連鎖的に掘り起こされるのではないか、と推測する。それに従って、年齢、生い立ち、性格や癖など色んなことを話した。けれど、Aは自分のことには捉えられないらしく、他人事として聞き流している風に見えた。
あれから早くも数ヶ月経った。何を聞かせてもAは何も思い出せなかった。もしかしたら、そういうものなのかもしれない。
｢俺がAを呼んだ理由って話したっけ?｣
｢ううん。話してもらってないよ｣
夕飯の洗い物が丁度終わったらしく、エプロンで手を拭きながらソファに向かってきた
Aは極普通に生活が出来る。実体はあるし、影もある。勿論肌も暖かい。幽霊には足は無いという説もあるが、それは透けずにきちんとある。
物に触れることが出来るためか、俺が呼び出した時から、何もせずに置いてもらうのは申し訳ないと家事をしてくれていた。
｢俺ね、本当はAが死んだ日、プロポーズする予定だったの｣
｢え…?｣
そう、雨の降っていたあの日、水溜りでスリップした車は彼女を撥ねた。
後頭部強打で即死に近い状態。引き摺られなかった為か、Aの遺体は医師の間でも奇跡と噂される程、本当に綺麗な状態だった。
箱の中で安らかに眠るその表情は今でも脳裏にこびりつき、忘れる事などできない。
俺の会社なんかに傘を持って来なければ、きっと死ななかった。今も生きて笑っていた。
大き過ぎる後悔の念に打ちひしがれ、俺は火葬されるその時まで彼女の指に指輪を付けるかどうか躊躇していた。果たして、想い人の一人も守れなかったやつに結婚を申し込まれて嬉しいのか。
結局、勇気なんて出ずに、気付いた時には全てが終わった後だったのだ。
立ち止まってたら変わらない。進める確証がなくても、歩かなきゃいけない。前後ろが間違っていようと、戻っていたとしても。道を踏み外そうとも歩めを進めよう。
もう、後悔はしない。
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二楷堂 - はじめまして。この作品を読ませて頂いてとても面白いな、と思いました。メンバーも豪華で見応えがあります。これからもチームVinegarさんのご活動応援させて頂きます。 (2015年9月16日 11時) (
レス) id: 395e3ef2a2 (このIDを非表示/違反報告)
津紀(プロフ) - 楽しみだけど無理しないでね。大好きだゾ〜 (2015年9月15日 23時) (レス) id: 2f0b1601a1 (このIDを非表示/違反報告)
ハル@チョコレート食べたい系女子(プロフ) - 皆さん新作(?)おめでとうございます!! 始めからとても面白くて、次のお話はいつかなぁと楽しみにしています！ ご無理なさらず頑張ってください!! (2015年9月15日 23時) (レス) id: 2184a38450 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チームVinegar x他2人 | 作成日時：2015年9月13日 2時
