1【おそ松】 ページ1
失恋した。
相手はカラ松。
告白する前だった。
「A...俺、っ、失恋、してっ」
「...そっか、」
カラ松は頑張ったよって言って、彼の頭を撫でた。
抱きついてくる彼の頭は私のお腹の辺りに埋まり、涙が服に染みていった。
それと同時に失恋した、という事実と色々な思いが心を砕いた。
「お前に慰めてもらったら、元気出たよ」
「それなら良かった」
カラ松の目元に滲む涙に、私の声が震えた。
それじゃ、なんて言って悲しそうに微笑んだ彼はもうこの部屋にはいない。
貴方が私のことを好きだったなら、お互い幸せになれたのに。
心にふと浮かんだ言葉が涙の幕を弾けさせた。
壁に凭れ、膝を抱えて顔を埋めた。
「A、残念だったな」
「おそ松、」
ドアの開いた音に顔を上げれば、カラ松によく似た顔が覗いた。
「いつから、見てたの？」
「最初っから。だけどよ...」
必死に泣いてることを悟らせまいとするが、おそ松は私の隣に目線を合わせて座った。
こんなんじゃばれちゃうよ、という意味も込めて顔を背けた。
「あいつより、俺にしようぜ」
大切にするけど。
え、と小さく声を漏らして私は彼の方へと顔を向けた。
少し顔を赤らめたおそ松。
相変わらず鼻の下をかく癖は治らない。
しばらく考えた末、私の出した答えは。
「考えて、みる」
そう一言伝え、また俯いた。
そんな私に、彼が怪しく笑っていたことは分かるはずが無かった。
.
あいつらは両想い。
なのにカラ松はAを諦めた。
それは全部俺のせい。
俺がカラ松にお前たちは両想いだって言った。
俺が喜ぶカラ松を殴った。
俺がカラ松に失恋したって言ってこいよって言った。
俺がその光景を見たかった。
俺がAの泣く顔を見たかった。
俺が、Aを欲しがった。
カラ松より俺の方がお前にいいと思うんだ。
ダメかな？
.
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作者名：白松 | 作成日時：2015年12月20日 18時
