飲酒禁止。

お説教。 ページ27

〆．



酒を飲んで、今日もAが説教たれる。



……と思いきや、何も言わない。



確かに酔ってはいるみたいやのに。



「A？今日はお説教なし？」



自分から叱られようとしてるところ、俺も末期やな。



Aに、叱られたいんやもん。



「……ないよ？だって、何も言うことないし」



あれ。Aって、こんな笑い方したっけ？



「何も、することないし……」



「………？」



「私ずっと、流星には私がいなきゃダメだと思ってたの」



口しか笑ってない。



「だけど……流星の同僚の人がね、教えてくれたよ。『私が気にかけるようになってから、藤井くん、忘れ物しなくなったんですよ』って」



「それは、」



「私がいなくても。……私じゃなくても、いいんだよね」



「A！」



「ごめん、泣くなんてダサいね…」



俺は、知らない間に、



「流星がちゃんとしてるの、素直に喜べなくて。最低だよね」



Aのことをどれだけ傷つけてたんやろう。



「違うねん、俺は」



「いいから。私……流星に頼られたくて、逆に依存してたの。流星にとって必要な存在でいたい、って。でも………私が流星を一方的に必要としてただけなの」



「そんなことない、俺も、」



「ちょっと、距離置こう？私たち。……流星が私のこと、必要だって思えるように……そういう人になれるように、頑張るから」



Aはわかってない。



俺は、とっくにAやないとあかん奴になってるんやって。



「ごめん、」



「A！」



Aは立ち上がって、すぐに走り去ってしまって。



慌てて追いかけたのに、Aの姿を見失ってしまった。



流れた涙を拭ってやることも、Aを捕まえておくこともできんなんて。



ダサすぎやろ……。



女々しくケータイの画面で何度もAの名前を押すけれど、



彼女が電話に出ることはなかった。



〆．

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