飲酒禁止。

彼が酔ったら。かみやま ページ43

〆．



彼氏のともは、お酒をあまり飲まない。



私も、飲む方ではない。



私は酔うとめちゃくちゃ泣いてともに迷惑かけちゃうから……。



でも、ともは酔ったらどうなるんだろう？



というのが、私の最近の興味の対象。



「ねえねえ、重岡くん」



「んぁ？なにー？」



「重岡くんって、ともが酔ってるの見たことある？」



秘密にしてたのに、鋭い重岡くんは私たちが付き合ってること知ってたらしい。



「ああー、あるで？神ちゃんのことベロベロに酔わせたんやけど」



「う、うん」



「神ちゃんな……」



な、何が起きたんだろう。



重岡くんの言葉の続きを待っていると。



「こーら、仕事中にお喋りせんの」



「「あ、」」



話題の中心の彼が間に入ってきた。



「しげ、のんびりしとったらまた残業やで〜？」



「そっ、それは勘弁やわ！」



慌ててパソコンと向き直る重岡くんを見ていると、ともの手が肩に触れた。



「………A、ちょっとええ？」



「うん……？」



なんだろ？



大人しくついていくと、エレベーターホールの端に辿り着いた。



「何か用だった？」



浮かない顔をするともの顔を覗き込んだら、ともは眉を下げたまま訊いてきた。



「しげと、何の話してたん？」



「え、」



何の話、って。



え？え？



もしかして、妬いてるの？



「ともの話、だけど」



「お、俺？」



想定外の答えだったのか、動揺してる。



「ともね、酔ったらどうなるのかなーって」



「あ、ああ、そうなんや、そか。……ならええわ。ああもう、ほんま焦った」



「ねえ、とも、酔ったらどうなるん？」



酔った時の記憶が残ってるかは知らないけど。本人から聞ければ間違いないし。



「………俺、酔ったら、めっちゃ気分悪くなる」



「ん？」



「胃の中のもん全部出すし、だるくなるし、やからお酒少なめにしてんの」



「そ、そうなん？」



意外、すぎる。



「早く言ってよ、私ばっか美味しそうにお酒飲んでたやん」



「それはええの、酔って泣き虫になるA好きやから」



「も、もう……なんなん！」



結局、ともにキュンとさせられて終わってしまった。



……お酒、ちょっと控えよ。



〆．

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