せめて選択肢をくれ。【桃源暗鬼】【〇〇しないと出られない部屋】弍巻

├無陀野 ページ4

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　無言で無陀野先生に指を向ければ、真澄隊長が数歩だけ下がった。代わりにムダ先が前へ出て、真顔で吐息をひとつ。首を少しだけ傾けた。


「……」

「……はい、いきます…」

「…ああ」



　そっと口を押し付けたら、彼に顎を持たれ、自然と爪先立ちになる。え、結構キツイ体制なんだが。そして何より目が怖い。何考えてんだ？ どういう心情の目だ？


　プルプルと震えるAのためを思ったのか、無陀野が彼女の腰に手を回した。添えるようにして支え、気持ち程度に抱き寄せる。…が、彼にとっての"気持ち程度"は"思いっきり"であって、Aがん゛ッ！？ と短く叫んだ。



　ここまでで、2分経過。



「〜〜ッ！！ ──かヒュッ、げほっ…てめ、肺活量どうなって…、！？」



　Aが無理やり抜け出し、へたり込む。



「…鍛えろ。そうすればお前も─」

「化物にはなりたくねぇので」



　そっぽを向いていた真澄隊長が、やっと終わったかと呟いた。「随分と長ぇな」そう笑いを含んだ声で言ってくる。いや私ももっと短いのが良かった。ほんとに。



「……雑魚がくたばってんぞ？ おい、A」

「へーい……」

「おら、起きろ」

「ちょちょちょ、痛い痛い！ 蹴らないで！」



　変に真澄隊長の当たりがキツかったような気もした。出る間際に謎にデコピンされたし。痛ぇ。



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