One More Kiss【神谷健太】

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健太 side




壊れるんじゃないかってぐらいの勢いで開けたドアの向こうには
メンバーが数人いて、その中にも樹がいて､他には誰がいるかなんて認識できないほど
メンバーのあいさつも無視で樹に向かって手が伸びる


陣「健太?」


あ、陣さんの声がする
でも陣さんごめんなさい
ごめんけど無視させて


健太「おい」


樹「…なんすか？」


自分でもびっくり。こんな低い声､初めて出た

てか、「なんすか」ってなんだよ
普通わかるでしょ
異常なほど妹大好きなけんただよ？
とられて怒らないとでも思ってんの？



健太「なに勝手に人の妹奪ってんだよ」


樹「別に、奪ってないですけど」


健太「じゃあなに？なんでAがお前のとこいんの？」


樹「昨日Aちゃんが来たんです」


健太「帰らしたらよかったじゃん」


樹「好きな子との距離縮めて、なにがいけないんですか？」


健太「だからって奪うことないじゃん」


樹「だから奪ってないです」


健太「まず、Aのこと好きになるの自体けんたは許してない」


樹「Aちゃんが俺のこと好きでも？」


健太「好きなわけないじゃん。Aはずっとけんたのなの。けんたが好きなの」


樹「...この前言ったけど、かわいそうですね。Aちゃん」


健太「は、？…うっざ」



前も思ったけど、なに、かわいそうって

Aは幸せだよ
こんなに自分のこと思ってくれるお兄ちゃんがいて
こんなに自分のこと大切にしてくれるお兄ちゃんがいて
ほんと、かわいそうな要素、全然ないし



陣「ちょ、なに？一旦落ち着こ？どないしたん二人とも」


樹「…何でもないです」


山彰「いや、何でもなくないじゃん」


陸「たっくんとか見てみな？すごい心配してるよ？」


樹「すみません」


LIKIYA「健太は？なんか言うことないの？」


健太「…すみません」



なにやってんだ俺
子どもかよ

樹は冷静なくせに、俺は冷静じゃないし
言われないと謝らなかったし

こんなんだから、Aも樹のとこに行ったの？
けんたがしっかりしてないから？
けんたに呆れた？疲れた？
樹が冷静で頼れるから？

あーなんかあの冷静さも腹立ってきた


あぁだめだ、さっきちょっと心が落ち着いたのに
また落ち着かなくなって､不安で、苦しい


Aがいたら落ち着くのに
「お兄ちゃん」ってかわいい声でかわいい笑顔で呼んでくれたら
けんたの心は安定するのに

Aなしで、どうしたら楽になる？


けんたにとって、Aは精神安定剤だ

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