海を航る人狼 51 ページ10
彼等セピア国は一度だけ天竜人に逆らった事がある。それも、国民全員でだ。
何故彼等も天竜人に逆らったのか。
それは、セピア国民全員が歴史上最も許せない事を一人の天竜人がしたからだ。
それは、ある一人の子供を死に追いやる程まで痛めつけた事。
それを国民全員が許さなかった。
国民全員の怒りがその天竜人に向けられた。
それほど彼等は優しいのだ。
優しいからこそ、彼等は争いを好まなかった。
セピア国の自慢出来る事は、民同士が争いをせずに物事を解決へ導くこと。
国の政治もそうだった。
誰一人として前に出過ぎたりせず、尚且つ誰しもがリーダーの様に振る舞う。
隣国にとってもセピア国というのは正に理想といえる国だった。
だが、そんな理想過ぎる国だったからこそ、天竜人に目をつけられた。
そして、こう言われたのだ。
「争いを好まない貴様らは我等天竜人の理想とするものと同類である」と。
そして、その時からセピア国は混沌に陥り、徐々に内部で崩壊し始めた。
「天竜人の成すがままだと言うなら、俺達は今まで何に対して頑張って来たんだ？」…という事を思う者が増えたからである。
これを見たセピア国の王であるセピアース・ヘルクトスは直ちに国民に武器を持たせた。
そして天竜人に逆らった。
そして結果は、勿論彼等の負け。彼等は天竜人という醜くて憎い存在に負けたのだ。
負けて彼等は天竜人から罰を受けた。
それが「一生天竜人に尽くす」という事だった。
罰を食らったヘルクトス達は今も大人しく天竜人に従って居るが、国民の中には天竜人に復讐しようとする者が多い。
彼等は今正に、解けそうなのに解けない鎖に繋がれているという状況に陥っているという事である。
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作者名：樂士 辿 | 作成日時：2016年3月30日 17時
