海を渡る人狼 55 ページ14
ﾌｧｲﾚｰﾂ「俺の名前はファイレーツではない。本名はアーノーツ。元セピア国王直属の側近の息子。父親同様、王に仕えた由緒正しい家系」
ﾍﾙｸﾄｽ/ﾌｧｲﾚｰﾂ「「グラン家」」
ヘルクトスは確信した。
彼が、自身の王家に仕えてきたグラン家の一員であることを。しかとその目で。
ﾊﾞｸﾞｽ「なるほど。グラン家の者が主君に裏切りをしたと」
ﾌｧｲﾚｰﾂ「……今更こんな事を打ち明けたからといってどうにもならない。それよりお前、良いのか？」
ﾊﾞｸﾞｽ「…………なに？」
ﾌｧｲﾚｰﾂ「俺の仲間が今現在お前のバグレン国に向かっている。もうすぐあの国は混沌の渦に巻き込まれる」
そうなればバグスは容赦はしない。
しかし、彼の命を奪う事までは出来ない。
彼には証言になってもらう必要がある。
この、バグレン国とセピア国の同盟を打ち消しにしない為に。
だが、そこでまた別の銃声が鳴り響いた。
そして、その銃声が鳴り止まないうちにファイレーツは、ノーアーツは倒れた。
周りには誰もいない。
しかし、弾が飛んできたのは事実。
ノーアーツが倒れたのがその証拠。
ﾌｾﾞﾙ「今のハ……？！」
ﾊｲﾈｽ「……」
ﾊﾞｸﾞｽ「ヘルクトス。一旦ここから離れた方がいい。とにかく戻るぞ」
ﾍﾙｸﾄｽ「あ、ああ……」
？「チッ、外したか」
彼らがバグレン国に着いた時には既に遅かった。どこもかしくも焔、焔、焔。
泣き叫ぶ声。
逃げる民達。
その光景は、悲惨で残酷なものだった。
そして、第一にバグスが心配したのはここに居座っている筈の従弟のバグスとシグ。
どうか無事でいてくれ。
急いで屋敷に向かうバグス。
が、屋敷に入った途端彼は気が付く。
異様な臭いに。
ﾊﾞｸﾞｽ「この臭いは……血か」
その臭いのする部屋へバグスは入る。
そこには、無残な姿でズタズタにされた、バグスの知る天竜人。
そして＿＿＿＿
ﾊﾞｸﾞｽ「……馬鹿な。嘘だろう？バグス。お前がやられるわけが……」
しかし、彼は直ぐに察した。天竜人の身にある刺し傷が彼によるものではないと。
ﾊﾞｸﾞｽ「ああ」
そうか。
これは、シグがやったんだ。
そうじゃなければ、こんな無残な、手慣れない斬り方をするわけがない。
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作者名：樂士 辿 | 作成日時：2016年3月30日 17時
