【文スト】濃霧と林檎？ 知ってたよ、此の野郎←【文豪ストレイドッグス】【太宰治】

燻る赤 ページ10

「非道い……」
歪んだ金属や処々に立ち上る煙や炎の柱は、横浜焼却作戦で傷付いた街を彷彿とさせる。濃霧に覆われた街の中、焼け焦げた匂いが肺を圧迫する。
芥川君は大丈夫だろうか。あの子は肺を病んでいる筈だ。
そう考えながら探偵社に向かって奔る。

「何だよ、クソッ」
途中、聞き覚えるある声がした。そちらに向かうと、立原君(みっちー)が自身の形をした何かと戦っているのが見えた。
「みっちー！」
私が駆け寄りながらみっちーの形をした彼の異能を蹴り飛ばす。私の体術はマフィアでも上位だ。中也さんのお墨付き。そんな私の蹴りが効いたのか、みっちーの異能は暫く動けずにいた。
「Aさん！？」
「苦戦している様だね」
みっちーは口許の血を拭うと眉に皺を寄せた。
「あれ、俺の異能なんすよ……Aさんにはもうバレちまってるんで云いますけど、俺の異能は金属操作だから……」
「銃が効かない、とね。『猟犬』は異能技師によって身体強化されてるって話だけど、肉弾戦は厳しいかい？」
私は適当な布でみっちーの止血をする。彼は短く礼を云いつつも表情は険しいままだった。
「うわ、そこまで漏れてンのか……。出来ねえ事はねえけど……俺の場合、潜入捜査用に弱い強化手術で」
そんな会話をしているうちに、彼の異能が今にも立ち上がろうとしている。
「情報からすると、異能の狙いは持ち主たる君に向かう。それを利用する」
みっちーは立ち上がると自身の異能を睨みつけた。
「君には君の異能を引き付けて欲しい。隙を見て拘束して、動ける方があの額の赤い結晶を破壊する」
「うっす」
彼の異能はゆらりと立ち上がると、みっちーに狙いを定めて動き出した。
「行くぞ！」
私が叫んだと同時に、沢山の金属製のモノがみっちーに向かって飛んで行く。それをみっちーは躱しながら、時にぶつかりながらも、自身の異能目掛けて奔る。私は死角から回り込む。
そして――、
「つかまえた」
私は背後から彼の異能の頸を絞め、そのまま後ろに投げる。流れるように体制を整え、正面から飛び付く。地面に倒れる頃には、完璧な肩固めの体制になる。彼の異能の顔の部分だけが空気に触れる。
「立原(・・)、やれ！！」
「うおおぉあああ！！！」
みっちーが雄叫びを上げながら赤い結晶に向かって踵を落とした。赤い結晶は音を立てて散らばり、光を乱反射させた後に霧散した。そしてそれは、私が拘束していた彼の異能を包んで消えた。

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