莢蒾の夢を ページ4
横浜裏社会史上、最も死体が生産された八八日。
あらゆる組織を巻き込んで吹き荒れた血嵐、龍頭抗争。
――――その終結前夜。
「失礼します」
目当ての人物は外を見ていた。
その視線を追うようにして硝子の先を見遣る。
硝子越しでは、赤い満月が空に浮いていた。赤い月明かりが首領執務室をその色に染め上げている。
赤く照らされた首領の表情は読めなかった。
私は足を進める。首領の傍に鎮座している
この部屋からは横浜の街が一望出来る。数ヶ月前までは、夜は
だが今は如何だ。赤く光る何か。あれは炎だ。黒煙が立ち上り、潮風に乗ってこの街の空気を汚染していく。
「非道い……」
思わず口から漏れた。
「非道いねえ……」
首領は此方を見ずに同調の声を上げた。
「Aちゃん、この場合の
私は間髪入れず応える。
「この抗争に勝つことです。このポートマフィアは横浜裏社会の秩序となるべき組織ですから」
「流石はAちゃん。そしてその為の答えが
首領は私が置いた資料を手に取り、とある頁を抜き出した。
「『白麒麟・澁澤龍彦』、ねえ。……異能の詳細も掴めているね。規模は……うん、完璧だ。捕虜となっている太宰君の情報、中也君の『あれ』を合わせれば必ず勝てる」
私の兄である太宰治と、中原中也さん。『暗殺王事件』以降、お二人で組む頻度が一気に上がった。抗争が激化してからは、お二人と直接会うことも少なくなっていた。
……こんな心算じゃなかった。私は兄に置いて行かれたくなくてマフィアに入った。兄に見捨てられたくがないが故に、勉学に励んだ。
そうしていくうちに、私は前線から離れていく。
なんで私はこんなにも弱いのだろう。
――まだ九歳だから?
否、年齢は理由じゃない。あの人なら、もっと上手に立ち回れる。
――女だから?
否、姐さんは幹部だ。
――異能が無いから?
そうだ。異能さえあれば、あの時Qちゃんだって助けられた筈。
異能さえ、有れば。
異能が欲しい。
仮令、自分を傷付けるものでもいい。あの人に、認められるなら。
「Aちゃん、御褒美に何か購ってあげよう。何が良い?」
「……そうですね。では――」
「――黒の
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます! 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー(どの口が) (6月21日 3時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ!?!?ついでに私も泣くよ!?(?)BEASTめっちゃ好きだけど!!作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます! これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公!!いやbeastもいいけど嬉しいですけど!!! 続き楽しみに待ってます頑張ってください! (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます!! イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します!! (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢野秋 | 作成日時:2021年11月1日 2時