幕は降りず３ ページ28
「マフィアの世界では、死は日常の延長線上であり一部だ。暴力や死、本能に欲望、そういうむきだしの人間の近いところに居れば、人間の本質をより近くで見ることができる。生きることの全体像を掴めれば、そうすれば何か、生きる理由が見つかると思ったんだ。だから、私はマフィアに入った」
太宰さんは静かに、骸砦の残骸に視線を向けた。崩れ落ちた塔は先端部分が残っており、廃墟の上に突き刺さっていた。そこに、ドストエフスキーと、そして澁澤龍彦の遺骸があるのだろう。
「そんな私だ、あの時はこの街に対して愛着なんて微塵も持っていなかった。中也のように忠誠を誓った訳でもない、只々自分の目的の為だけにマフィアにいておきながら力を持ち過ぎた私は、森さんにとってはかなりの不穏分子だったのだろうね」
其の儘、太宰さんは「森さんの遣り方は気に食わないけど」と続ける。
「あの人はあの人なりにこの街を愛している。そして君も、この街の為にずっと働き続けてきた。君がこの街をどれだけ愛しているかは、森さんならよく判ってくれているよ。そんな森さんが、太宰Aという優秀な同志を切り捨てる筈がない」
太宰さんは私を見詰める。その鳶色の瞳の奥に、力強い光があった。
「この街を愛する心。それが君の、当時の私との違いだよ」
太宰さんはそこまで云うと、「森さんがこの間私を幹部に勧誘したのは、
塔の先端が怪しげな光を放ち始めている。
「却説……ここまでは読んでいた……けれどこの先は、彼ら次第だ」
太宰さんがそう呟いたのを聞いて、私は立ち上がる。
矢張り、三人を可能な限り援護するに越したことはない。絶対的な安心など、この世界にあるわけがないのだから。
私が何をしようとしているのか察したのか、太宰さんは私のスカートの裾を掴む。だからスカートを掴むのは止めて欲しい。外套が無いから掴みやすい所がそこしかないとはいえ、此方の性別と年齢をもう少し考慮して欲しい。
「A、危ないから此処に居るんだ。精神操作系、それも幻覚を見せる異能を相手取るのは容易じゃ無い」
「大丈夫です」
私は太宰さんの制止を振り切って歩き出す。
「私は異能と仲良しですから」
私は振り返る。
「――行ってきます、兄さん」
太宰さんは半ば諦めたように笑った。
「こうなった君を止める術はもう無い。……行っておいで、A」
私はその言葉を聞くと、骸砦の跡地目掛けて走り出した。
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます！ 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー（どの口が） (6月21日 3時) (
レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ！？！？ついでに私も泣くよ！？(？)BEASTめっちゃ好きだけど！！作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます！ これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公！！いやbeastもいいけど嬉しいですけど！！！ 続き楽しみに待ってます頑張ってください！ (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます！！ イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します！！ (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢野秋 | 作成日時：2021年11月1日 2時
