受け入れること２ ページ23
私は敦君に問う。
「敦君、君は自分の事を如何思っている？ 好きか嫌いか」
敦君は何を云われたのか判らなかったのか一瞬硬直する。そして直ぐに焦ったように云う。
「今はそんなことしている場合では……！」
「答えるんだ」
低い声が出た。それに驚いたのか、敦君は肩を震わせてから目を落とした。
「嫌いです。前からずっと、それは変わりません」
「そうか。じゃあ、君の異能である白虎は？」
「……！」
敦君は質問の意図を理解したのか顔を上げた。そしてまた拳を握り締めた。
「……嫌い、です。僕にとって、虎はずっと恐ろしいものでしたから。この異能の所為で僕は組合に懸賞金を賭けられた。そして周囲の人を何度も傷付けることになった。それに僕は、社長の異能がなければ自分の異能を制御出来ません。僕にとって虎は――」
敦君は眉間に皺を寄せ、唇を横に引いた。
「誰かを傷付けてしまう恐ろしいものです」
敦君は自分の腕のあたりをさすった。まだ傷は癒えない。
「芥川は自分の異能を怖がらない。鏡花ちゃんも、本当は夜叉白雪を嫌いたくなかったと云っていました」
私は首を振った。
「自分の異能を受け入れる、それが僕に足りない事……」
敦君は納得した様に、それでいて悔しそうに呟いた。
「……Aさん」
敦君は膝を抱えて顔を下に向けたまま私を呼んだ。
「Aさんにとって、自分の異能はどのような存在ですか？」
「―― “傷” かな」
私はぽつりと呟くように答える。
「“傷”？」
「癒える事のない、一生の傷。私が私であると証明する為の傷。そして、自尊心」
敦君は反芻するように呟く。
「自尊心……」
敦君は、困った様に笑った。涙を隠すような笑みだ。握られた拳が僅かに震えていた。
「難しいですね。これじゃあ中々取り戻せそうにないです」
「……そうだね」
近くにあった小石を投げた。
「自分を好きになることは、自分を嫌いになるよりずっと難しいものだよ。私も、そうだったから」
私は立ち上がる。
「それでもね、私はこう思う」
じゃり、と足元が音を立てる。
「癒える事のない消えない傷ならば――」
顔を上げて、濃霧の向こうの骸砦の頂点を見る。
「それも抱えて生きようじゃないか……ってね」
「！」
そして私は歩き始める。後から布の擦れる音がしたことに気付き、途中で足を止める。
「ねえ敦君――」
私は振り返って、未だ怪我で満足に動けずにいるが、それでも立ち上がろうとしている敦君に問うた。
「――君は何故足掻く？」
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夢秋(プロフ) - 蒼さん» ありがとうございます！ 一歩間違えたら夢主ちゃん太宰さんに閉じ込められるくらい無茶してます。早く起きないかなー（どの口が） (6月21日 3時) (
レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 主人公ちゃんんんん目覚めないと太宰さん泣いちゃうよ！？！？ついでに私も泣くよ！？(？)BEASTめっちゃ好きだけど！！作者様へ神作品です最高ですありがとうございます (6月13日 12時) (レス) @page50 id: 699f0917a9 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - いけるしかばねさん» ありがとうございます！ これからしばらくリメイクに入るので実質回想シーン→BEASTで夢主なかなか起きないことになります( ͡ ͜ ͡ ) (2023年2月3日 14時) (レス) id: 28dc9b7eb5 (このIDを非表示/違反報告)
いけるしかばね - ぬあぁぁああ起きろよ主人公！！いやbeastもいいけど嬉しいですけど！！！ 続き楽しみに待ってます頑張ってください！ (2023年1月31日 16時) (レス) @page50 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
夢秋(プロフ) - 蒼月さん» ありがとうございます！！ イベントとか終わったらぼちぼちリメイクしながら再開します！！ (2023年1月24日 2時) (レス) id: 9185832e78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢野秋 | 作成日時：2021年11月1日 2時
