泥 ページ37
その直前に――。
女性構成員や準幹部等の自身に対する陰口を聞いた。
妬みや嫉みからきたものであるが、一番心に深い傷を残した一言が、「兄の七光の癖に」。
兄には一切自分が見えていないのに、認めてもらった事なぞ全くないのにそんな事を云われるのは心外だった。
そして、兄である太宰治が頬を赤らめた女性を引き連れているのを見た。
妹よりも赤の他人を優先する事には慣れていたが、陰口の後ではかなりストレスになった。
その上、追い討ちをかけるようにいきなり仕事を押し付けられていた。残業三日間が終わろうとしていた時にいきなりの仕事。
十一歳の子供を追い詰めるには充分だった。
そして溜まりに溜まったストレスが爆発し、それが影響してか、前世の、詰まり『桃島A』の記憶をはっきりと呼び起こした。
だが、子供にはあまりに濃い記憶であった為、脳のキャパオーバーも引き起こした。
それで『太宰A』として生きてきた意識とか人格だとか云うべきものの大部分が、前世の記憶と入れ替わるかのように封じ込められた。
それで前世の『桃島A』が、夢小説によくある『憑依転生』と勘違いした。
気付き始めてはいたんだ。
私の感情が、『桃島A』の意識や感情が、『太宰A』……そう、私に引っ張られつつある事に。
先刻も感情のままに叫んだけど、どっちの思っている事か分からない程にまでなっていた。
それ程までに違和感なく融合されていた事に、気付き始めてはいたんだ。
生い立ちは全く違うと云っても過言ではないのに、感情や意識や記憶が違和感なく混ざるなんて事、普通じゃない。
「知ってたよ、此の野郎……」
そんな呟きは黒に溶けた。
私は目を閉じ、息をそっと吐いた。
今迄の事を踏まえて、目の前の少女に掛ける言葉を考えた。
息を小さく吸い、目を開けた。
そして手を差し伸べた。
「――迎えに来たよ、『私』」
少女は手をとるとわっと泣いた。
「遅すぎる!」
という声と共に、『桃島A』と『太宰A』の記憶と感情が完全に馴染んだ。
気付けば、少女は消えかけていた。
「おやすみ」
私がそう云うと、少女は満足気に頷き、花弁に巻かれながら消えた。
そこで私は現実に戻ってきた。
いつの間にか太宰さんは居なくなってて、私はベッドで寝ていた。
泣き疲れて寝てしまったらしい。
ふと床に目をやると中也さんが寝ていた。
駆け付けた彼がベッド迄運んでくれてたと理解した私は、感謝しつつ彼を客用蒲団に寝かせた。
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サングリア - いえのきあさん» 判りました!定期考査頑張って下さい。私も今日から考査です…(´-ω-`) (2018年11月27日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
いえのきあ(プロフ) - サングリアさん» ありがとうございます!今はテストや課題があってなかなか更新できませんが頑張ります!終わりのセラフもテスト終わったらぼちぼち買うので、お待ちくださいませ! (2018年11月26日 22時) (レス) id: 75f23159f6 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 黒の時代…更新頑張って下さい! (2018年11月26日 16時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - 長くてすみません…(´-ω-`)出来たら2つ宜しくお願いします!更新頑張って下さい (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
サングリア - クルル、クローリーなどの上位吸血鬼に気に入られて心配される。吸血鬼にしようとしている。渚は四鎌童子、アシェラに出会い、話をしたことがある。四鎌童子と一緒に3年間行動した。渚はその事を覚えていない。かなり謎に包まれた渚の過去 (2018年11月24日 7時) (携帯から) (レス) id: 5b0fbd2365 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢秋 | 作成日時:2018年2月10日 2時