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雨も止んで月が出てきた。
満月には少し欠けた月。
それでも明るくて、道中灯りは必要なかった。
月明かりに照らされている廃寺は静かで厳かで少し近寄りがたい雰囲気。
廃寺自体に灯りはついてなくて
「誰も居ねぇのか??」
「みたい……」
普段ここは達磨一家さん達が居ないだけでこんなに静かなんだね。
そして寂しい。
「ん?ユウ、あっち」
あたしは廃寺の裏を指差した。
そこに人の気配を感じたから。
「行ってみるか?」
「うん」
大事な物だから手渡せるなら手渡したい。
もう走ることはなく、ユウと並んで歩いて裏へと向かう。
「誰か起きてたら、俺は帰るから」
「え!?」
ちょっ、なんで!?
これ渡したらすぐに帰る……
「話したいだろ?」
「それは……」
話したい……けど。
柔らかくユウが笑う。
「お前はもうちょっと我が儘を言ってもいいと思うんだけどよー」
「言ってるよ!」
そして大概みんなその我が儘を聞いてくれるのだ、ありがたいことに。
「ってことで俺は帰るが、1人で帰ってくるんじゃねぇぞ。迎えに来るから」
「いやいやいや、そんな迷惑はかけられな……」
「誰が迷惑だっ」
ドスッと頭のテッペンにチョップをくらった。
「家族のことで迷惑なんかあるかっ。バカタレッ」
「ユウ……」
どうしてこんなに優しいんだろう。
スモーキーもララもタケシもピーもユウも。
皆、皆。
こんなあたしが皆に出来ることってなんだろう。
「ありがとう、お兄ちゃん」
「おっ、良い響きじゃねぇーの」
今出来ることはお礼を言うことだけで、心を込めて言うとユウは照れくさそうに笑ってくれた。
「あっっ」
裏に着いて……居たのは
『誰だ』
日向さんだった。
柔らかな月光に照らされ、煙管を吹かす日向さんは一枚の絵画のようで……美しく
あたしは息をするのも忘れ、その光景に魅入ってしまった。
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作者名:めっこ | 作成日時:2019年9月1日 13時