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リナリア/見明佐和 ページ19

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金魚柄の浴衣が下駄の音に揺れる。
衣擦れの音が、人波に合わせて私の体によく伝わる。
蒸し暑い夜だ。8月に相応しいなと、うなじの汗を拭いながら思った。祭りの夜は、いつにも増して暑くて堪らない。

「着いた。待ってる」
数分前に送られていた幼馴染からのメッセージが私の足を急がせる。早く彼のところに行かなくちゃ。一番最初に彼にこの姿を見て欲しいから。
私だけを見て、綺麗だねって言わせたいから。
背伸びした柄の浴衣も、簪の重さも、彼に褒められるため使ったもの。

待ち合わせ場所の鳥居の下で、浴衣姿の彼はスマホに視線を落として待っていた。身なりと息を整えて、緊張がバレないように声をかける。


「佐和くん、お待たせ」
「おお、浴衣似合ってるじゃないの」
「ありがとっ」


よし、バッチリ。私は心の中でガッツポーズをした。
彼の隣に立って、当たり障りのないことを話して会話が終わらないように笑う。彼との二人きりの時間を終わらせたくない。なんてったって、今日は私と彼のデートではないんだから。


「お、ミーたちもうちょっとで着くってよ」
「そ、そう」

そう。巴ちゃんとハルくんも来るのだ。そして、佐和くんは二人から連絡が入った瞬間に、一番顔を綻ばせたんだ。それがすごく悔しくて、ぐ、と握った拳に力を込めた。巴ちゃんもハルくんも大好きだけど、二人がいないとこでしかアピール出来ないもん。

だから、今のうちにしなくっちゃ。
焦る気持ちを抑えて、彼の手を取って口を開く。


「佐和くん、ラムネ飲まない?」
「え?でももうすぐミーたち来るけど…」
「でも喉乾いたし、売ってる場所もすぐそこだから巴ちゃんたち来る前には間に合うよ。いこ?」
「うーん……」

いいから来てよ!!自然に握ったはずの手に力が込もって、全然自然じゃないのにも気付かない。焦った思考はラムネに彼を注意を引くために一生懸命になってしまっているようだ。


「わ!二人とも手繋いでどうしたの?かわいー!」
「えっ?と、巴ちゃん!!えっと…その浴衣似合ってるね!」
「Aちゃんも似合ってるよ〜!大人っぽくて素敵!」


ゲームオーバーは近すぎた。男の子にしては高めのアルトボイスが張り詰めた糸の間を抜けていく。佐和くんと繋いだ手はゆるく解かれ、あたたかなアットホーム感が私たちを包む。

アットホーム感なんかいらない!!
私が佐和くんとなりたいのは恋人同士なのに、なんでこうなっちゃうの!


早くこの恋に気付いてよ、馬鹿で鈍感なお兄ちゃん!!

花言葉「この恋に気付いて」

アネモネ/吉篠七緒→←◇



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蒸田。(むしだ)(プロフ) - くっ…蛍からチョコを貰いたい人生だった… (2019年2月17日 7時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花言葉企画参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2019年2月14日 22時

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