◇ ページ18
「悪かった、助けてやれなくて」
「…ど、して」
「ん?」
「どうして私を責めないの、あなたに八つ当たりしたんだよ、?」
涙が私の頬にこぼれ落ちたのを親指で拭いながら彼は笑った。
お前を責める理由なんてないだろ。
その言葉を皮切りに、私はダムが決壊したように泣き崩れた。
輝崎くんはそんな私を抱きとめて、泣き止むまで隣にいてくれた。
泣き過ぎて目が痛み始めた頃に私の意識が戻ると彼は水を自販機で買って目元を冷やせと渡してくれた。
「なんで、輝崎くんはこんなに優しくしてくれるの」
そう聞くと彼は困ったように眉を下げて笑った。
「特待生に、惚れたからかな」
ぼっと顔が赤くなる。
そんな私に笑いながら、私が握りしめていたネックレスに目をやる。
「…それ、元彼に貰ったもの?」
「あ、うん。未練がましく握りしめて泣いちゃってた」
「ずっと肌身離さず持ってたのか?」
「うん、シャツで隠してた。さすがに明日からは出来ないけど」
なら、と言って彼が取り出したのは、ハイビスカスをモチーフとしたネックレスだ。
「今日仕事で、ペアネックレスとしてユニット全員貰ってさ。お前さえ良かったら、明日からはこれをつけててくれよ。もう片方は俺がつけるから」
「え」
困惑する私にネックレスと入っていた箱を押しつけて彼は立ち上がった。
「知ってるか、ハイビスカスの花言葉」
新しい恋らしいぞ。
そう言って彼は立ち去った。
梅雨の明けきらない初夏の日の夜。
私の手には、少し汗ばんだペットボトルの水とふたつのネックレスが握られていた。
花言葉 「新しい恋」
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蒸田。(むしだ)(プロフ) - くっ…蛍からチョコを貰いたい人生だった… (2019年2月17日 7時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花言葉企画参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月14日 22時