ハイビスカス/輝崎千紘 ページ17
「悪い、他に好きな人ができた」
元々、この学園の中等部に通っていた訳でもなく、一年の留年というハンデを抱えた、この学園では幻級の女子生徒である私に周りは特別優しいわけではなかった。
女子生徒、というだけで特待生にされた私に実力が伴っているわけもなく、嫉妬よりかは憎悪に近い視線に耐えるばかりの日々。
入学してからなかなかのハードスケジュールで心身共にボロボロになって、それでも毎日忘れず彼と連絡は取るようにしていた。
彼は中学の頃に告白してきてくれた人で、いつでも私を気遣ってくれる優しい人だった。それに甘えすぎていたんだろう。
今日も、すでに夜遅い時間だが声が聞きたいがために電話をしたら、冒頭の台詞だ。無理もない、同じ高校に通っていたのにいきなり進路を全く違うところに変えた私に、彼の気持ちがついてくるはずがなかった。
彼から貰ったネックレスを未練がましくも握りしめて寮のロビーで一人たそがれ始めてどのくらい時間が経ったか分からないけれど、カツンと人の歩く音が聞こえ、携帯の明かりで照らされた。
「…特待生!?」
「…輝崎くん…?」
「こんなとこでお前、なにしてるんだ…」
心配の色を浮かべるこの瞳が、私は苦手だ。
輝崎千紘くん。この学園のトップユニットのリーダーで、才能の塊のような人だ。
彼の瞳は、まっすぐ前を向いていて、自分を過信はしないけど自信は持っている。絶望を知らなそうなまっすぐすぎるそれは、私には痛い。
「なんでもないよ、台本確認してたら寝てただけ」
私の顔から視線を逸らさない彼に、そう言って下手くそな笑顔を浮かべる。
「…辛いことがあったなら、誰でも周りの人間に吐き出してみたらどうだ」
…何も知らないのに、そんな簡単そうに言わないで。
「クラスのやつらとか友達とかにでも」
「っそんな簡単に言わないで!吐き出して楽になるならとっくにしてる!クラスに溶け込んですらいない私に友達なんているわけない!環境と才能に恵まれたあなたには分からないでしょ!」
全て口に出してから理性が戻った。
やってしまった、こんなのこの人に言ったってなんの解決にもならないのに…。
輝崎くんの零した溜息にびくっと体が震えた。
「…やっと言ったな」
え、?
「特待生が辛そうなのは周りから見ても一目瞭然だったよ。けど荒木先生が、自分から言ってくるまではほっとけ、って」
なにそれ、、
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蒸田。(むしだ)(プロフ) - くっ…蛍からチョコを貰いたい人生だった… (2019年2月17日 7時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花言葉企画参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月14日 22時