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そんなことがあったのが数週間前。
あの翌日のオーディションは無事合格して収録も無事終わった。
不思議なことにそれから彼女とは全く会えなかった。
央太と同じクラスならそのクラスに行けば会えるのでは、と思った自分を制して、ミヤに指定された場所に俺は向かっていた。
途中、2年のクラスを通り過ぎようとした時、彼女の声が聞こえた。
よく通る声をしている彼女の声は1度聞けば忘れられるわけもなく直ぐにわかった。
なぜ2年のクラスにいるのか、そこには疑問を持たずその教室に入ろうと扉に手をかけた時、
中から聞こえた彼女ともう1人の声に体が動かなくなるのを感じた。
「ここ、もうちょっと儚さを足していきたいんですけどどう思います、千紘さん」
「何も完璧を追い求めなくてもいいだろ、A」
「だって、それでファンの子にバッシング受けたくないじゃないですか!
妥協してバッシングされるの私が一番嫌ってることだって、千紘さん知ってるでしょう?」
1年の実力者___天音A
実質学校のトップレベル___輝崎千紘
2人のその会話だけで2人がかなり親しくて、自分なんかより千紘の方が彼女により近い位置にいることが手に取るようにわかった。
会話を聞いた後ろめたさからか、はたまた心に受けた衝撃からか、俺の手はドアから離れ体の横にあった。
直後、俺を絶望に突き落とすような一言を彼女が発した。
「千紘さん、今度はいつデートできるんですかぁ…もうすぐ記念日なんですよ〜?」
「記念日、あぁ再来週だよな?ちゃんとそこは予定空けてある。お前も空けてるだろ?」
デート、記念日、
それらが表すだろうことがひとつだけ頭に浮かんだ。
その日以降、彼女に会っても特別な思いは心の底に隠して、今まで通り地味で影の薄い俺でいることにした。
各学年の実力者であるあのふたりは、外見中身全てを加味して、どこから見てもお似合いのふたりなのだ。
地味な自分が入れる隙なんてものはどこにもなかった。
それでも願うならあの笑顔を俺だけに見させて欲しい、独り占めさせて欲しいと思う。
____月下美人の花が一日で枯れるように、俺の恋もとても短い、でも夢のような時間であったと思いたい____
花言葉「儚い恋」
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蒸田。(むしだ)(プロフ) - くっ…蛍からチョコを貰いたい人生だった… (2019年2月17日 7時) (レス) id: f91a58f64c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花言葉企画参加者一同 x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年2月14日 22時