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「先あがります、また明日。」
こんな声を今日で何回聞いたか。
ディスクの辺りを見回しても誰一人パソコンを開いて仕事をしている人が居ない。
当然、あの豚も定時にあがって帰って行った。
自分の机には書類、書類、書類。
パソコンのモニターには一日中同じファイルが開かれている。
隣の席の彼は椅子に鞄が置いてあるようで、まだ帰ってはいないようだった。
「どーすっかねぇ…、終わるかなぁ。」
次の書類を手に取り、ため息を思いっきりつく。
1人の特権か、残業の特権か、思いっきりため息をつくのは何故か清々しい。
無意識にカタカタ、とキーボードを叩く。
書類をみればみるほど、プレッシャーが溜まる。
あぁ、浦田先輩に迷惑かけたくないなぁ。
後輩が仕事できない人って思われたくないなぁ。
あの豚に、怒鳴られたくないなぁ。
あの豚の記憶なんて、消えればいいのに。
カタ、カタカタ、カタンッ。
強く押したエンターキーは誰もいないオフィスに響く。
疲れた、どうしようもなく疲れた。
無意識に考えるのは豚、豚、豚。
どんだけ恨みがあるんだ、と心底自分に呆れる。
パソコンで時間をみると23時をうわまっていた。
どんだけ仕事にのめり込んでいたんだ、というくらい一気に疲労が身体を襲う。
お腹も空いたなぁ、
センラとお昼食べれば良かった。そしたら、残業も持っと進んだだろうか。
「あれ…?てか、センラまだ会社居るよね。」
「どうしたんだろ。」
ふと気になっただけ。椅子に乱暴に置かれた鞄にはまだセンラは確実に社内に居ることが分かっていた。
「まぁ、大丈夫だよね。」
「なにが?」
「…へっ???!」
もう一度仕事を頑張ろうと意気込むように肩を回す。
センラの安否が不安になり声に出してみたら背後から聞こえた彼の声。
驚かない訳ないだろう。
「せ、センラ…。」
「センラくんですよ〜。んで、どしたん。」
「え、いや、センラまだ社内に居るんだろうな、って思ったけど姿見えないから大丈夫かなっ、て。」
「…ふーん。俺の事考えてくれたんや。」
「あ、残業お疲れ。カフェラテ買ってきたでぇー!」
嘘偽りなく彼の疑問に答えをする。
少し反応は薄かったが、彼なりの照れ隠しだと信じたい。
センラが買ってきてくれたカフェラテは、温かくて、それにて、どろどろに甘かった。
「(Aが俺のことを脳内で埋めてくれた…。嬉しいなぁ。)」
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ごしき(プロフ) - 束感まつげしかさん» コメントありがとうございます🥲💕私の作品に巡り会ってくれてほんとに嬉しい限りです🙏😭更新も何気なく、不束者の作品ですがご愛読の方よろしくお願い致します🙇♀️ (2023年1月31日 22時) (レス) id: 7aacfb800e (このIDを非表示/違反報告)
束感まつげしか - コメント失礼します🐱以前読んだことのある作品でもう一度巡り合ったので読み直しました◎💗久しぶりに続きも更新されていてわくわく感がすごいです😽愛読させていただきます◎💗 (2023年1月31日 22時) (レス) @page18 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
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