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咄嗟に出たその言葉に鈴木さんは何を言ってるんだと言いたげな表情をしていた。
そしてわたし自身も。
自分の口から発した言葉だというのに唖然とし、鈴木さんの顔を見ながら何度もまばたきを繰り返した。
「は?何言ってんだ、お前」
ほら、やっぱり。
「さっきより熱上がってきたんじゃね?」
わたしのおでこに当てる鈴木さんの手は、冷たいわけじゃないけど火照った体にはヒンヤリとして気持ちいい。
目も風邪のときみたいに潤んで視界がボヤけるし、本格的に熱が上がってきちゃったのかな…。
「…何その目、もしかして誘ってんの?」
「へ?あ、ちょっ」
おでこに当てられていた鈴木さんの手が頬を伝い顎をグッと引き上げる。
普段では考えられないその行動と、徐々に近づいてくる鈴木さんの顔に、心臓はうるさいほど音を立てわたしは思わずギュッと目を瞑った。
すると
「はぁー、お前なぁ意図的じゃないにしろ男の部屋に上がってんだからもうちょい危機感持てよ、手出されて文句いえねーぞ」
と顎から手を離した鈴木さんはすっかり呆れ様子で。
なんだったの今の…。
普段はそんなことをするような距離感じゃないわたしたちの間に、確実にいつもとは違う空気が流れてる気がした。
こんがらがった頭に、速さを増した鼓動。
わたし、何か期待してた?
「…………すずきさんにならかまわないです」
そう口走ったわたしの手は自然と鈴木さんの腕を掴んでいた。
体が熱い。
わたしはどうしたいの?なにがしたいの?
「お前はさっきから何バカなこと言ってんの。第一俺は病人に手出すほど飢えてねぇよ」
わたしの手は軽くあしらわれた。
冗談とは言えさっきは自分からあんな風にしてきたくせに、取り乱してるのはわたしだけですごくバカみたい。
…病人じゃなかったら手を出してたの?
感情的になる気持ちを抑えきれず鈴木さんの首に自分の腕を回し、強引に引き寄せるとわたしは彼の唇に自分の唇を押し当てた。
聞こえてしまいそうなほどにうるさい鼓動と、時計の秒針の音だけが響く部屋。
たった数秒、リップ音と共に離れた唇には銀色の糸が光る。
「……煽るのもいい加減にしろよ」
はじめに仕掛けたのはわたし?あなた?
失恋したばかりのはずなのにこんなことをしてる自分が信じられなくて、胸の高鳴りと熱い体に頭がクラクラとする。
「…ぜんぶ、熱のせいです」
全部、熱のせいにしてもいいですか?
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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています!更新停止状態のままですが更新はされるのでしょうか? (2019年11月27日 4時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みたらし(プロフ) - ふぉとさん» ふぉと様、この度はコメントありがとうございます。社交辞令と分かっていても嬉しくなってしまうコメントです( *´ω`* )笑 引き続き目を通していただけるように精進いたします、是非またいらしてください! (2019年9月12日 20時) (レス) id: d1fa9ff20a (このIDを非表示/違反報告)
ふぉと - えっもうえ?この小説すこすこすぎて……え?しかも鰓呼吸さんまでいる?やっぱ私たちって運め((みたらしさん!もうこれは神ですね!神作品ですよ!!ずっと応援しています!! (2019年9月12日 6時) (レス) id: f531edd03e (このIDを非表示/違反報告)
みたらし(プロフ) - 鰓呼吸さん» 鰓呼吸様、この度はステキな感想ありがとうございます。少しでも面白いと思っていただけたのなら嬉しい限りです( ´ ▽ ` )ノ 未熟者の駄文ではありますが、引き続き目を通していただけるような作品作りに精進したいと思います…! (2019年9月5日 21時) (レス) id: d1fa9ff20a (このIDを非表示/違反報告)
鰓呼吸 - 面白いです!その、声優さんモノだと文章があんまりしっくりこない作品とか多かったりするんですけど、なんか、すごいストーリーだけじゃなく、文章の方も手を抜いてない感じで好きだなぁと思いますた……。これからも更新頑張ってください!! (2019年9月5日 2時) (レス) id: 651ad92b57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みたらし | 作成日時:2019年9月4日 20時