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熱さを帯びる二人の吐息が絡まりあって、想いを伝えるように身体を抱き締めると制服の布が擦れる微かな音が生まれる。本来、今日この時間は間近に控えた文化祭で披露するダンスの練習をするはずだった。今この瞬間も汗を流しているであろう仲間たちの姿が脳裏に浮かんで二人の時間を優先したことを心の中で謝ってみる。普段その輪では特別な素振りを見せず溶け込んでいる自分たちと、この甘過ぎるほどの空気に包まれる自分たちとの温度差を感じると背徳感のようなものが背筋にピリッと電流の如く走り、下腹部が重たくなるような独特の感覚を自覚し始めた。
「俺も……ずっと、ずっと」
雄登が緩やかに伏せていた瞼を上げてみると、これまで見たことのないような熱っぽい龍我の表情が瞳に映った。その熱が移るように体温が内側からじわりじわりと上昇していく。
二人とも、同じ気持ちだった。出来ることならこの先へ進んでみたいのに、その術も知っているのに、お互いの気持ちを痛いほど知っているのに。これまで過ごしてきた関係が崩れてしまうような気がして恐れていた。けれど雄登は確信した。龍我も自分も求めているものは同じ。そうじゃなければどうしてこんなにも熱い視線を向けてくれるの?
『龍我、目。つむって』
恍惚とした雄登の表情がなんだか気恥ずかしくて、それでもこれまで知らなかった恋人の表情を見ていたくて目が離せないでいると雄登が照れ臭そうに笑って龍我の真似をした。ほどよく緊張の糸が張っていた空気が一変して、二人でふわりと笑う。
何度目かもわからないほどに重ねる唇は幾度と触れ合っても飽きることはない。またどちらともなく、唇の隙間からそっと舌を伸ばすとお互いのそれがぬるりと触れ合って二人の熱を上げていく。図っていないのにぴったりとシンクロしたタイミングが雄登が確信した想いにさらに自信を持たせた。二人以外は誰もいない家、テレビも何もついていない部屋の中で少しずつ色を濃くして響くいやらしい唾液の絡まる音が響く。その中に龍我の鼻から抜けていくような小さな声が聞こえて、雄登はさり気なく片方の足を龍我の自分よりもむっちりとした足の間に寄せてみた。同じようなタイミングで龍我が身体をより一層近くに引き寄せてきたものだから、縮んだ距離のせいで太ももに硬いものが当たる。もう少し、いや、まだまだたくさん。龍我の舌を味わっていたかったのに、気まずそうに肩を押されて泣く泣く唇を離す。
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作者名:り x他1人 | 作成日時:2021年4月2日 5時